自己破産とは
自己破産は、所定の申立書、資料等を裁判所に提出して審理してもらい、免責の許可をしてもらうことで借金をゼロにしてもらう手続きです。
裁判所への申立にはいろいろな書類が必要になりますが、自己破産をすることで返済の不安が解消し借金のない新たな生活を始めることがで来ます。
自己破産すれば借金・滞納金等が全部チャラになると思われている方もおられますが、自己破産しても逃れられない負債があります。
免責されない負債の詳細はこちら
返済不能状態で自己破産
自己破産を裁判所に認めてもらうには、現在の収入、資産では借金の返済が不可能な状況(支払不能状態)であることが必要です。
自己破産は法的に債権者の貸金をチャラにすること手続きなので、「返済できるが返済したくないので自己破産したい」は認められません。
裁判所に返済する余力があると認められるおそれがあるような場合、自己破産が難しくなり他の方法(任意整理、個人再生)を検討する必要があります。
自己破産しても全財産が没収されることはない
自己破産を考えている方にとって一番心配なことは、「自己破産したら全財産を裁判所に差し出すことになるのか」でしょう。
債務者は、債務者が自己破産すると1円も回収できなくなります。
このように債権者に大きな損失を与えるので、破産者に財産があれば換金等して返済に充当されることになります。
不動産や高価な動産は基本的に処分しなければいけませんが、当面の生活費としてある程度の現金や預金、自動車等、額や価値によっては手元に残すことができます。
また、生活に必要な品(家具や寝具、エアコン等)なども保有できます。
このように自己破産時に保有できる財産を自由財産と言います。
自己破産しても残せる財産(自由財産)
- 現金99万円まで(預金不可) ※直前に預金から引出した現金は認められない場合があります。
- 新得財産(自己破産開始決定後に取得した新たな財産)
- 差押が禁止されている財産(生活に必要な物・・例えばタンス、ベッド、洗濯機、冷蔵庫、仕事に必要な道具等)
- 確定している(締日が到来している)給与の4分の3(上限33万円)及び退職金の4分の3
- 生活保護費、年金、失業給付金等
上記以外の財産で今後の生活に必要な財産があるような場合は、自由財産の拡張の申立を行います(裁判所の職権で行われることもあります)。
ただし、拡張分も含めて保有できる財産は最大99万円までです。
自由財産の拡張
※福岡地裁では、下記項目は拡張の申立なしに換価等をしない財産との取扱いになっています。ただし、裁判所は管財人の意見を聴いて相当と認める場合は換価の対象となります。
- 預貯金・定期預金(20万円以下)
- 保険の解約返戻金(20万円以下)
- 自動車(20万円以下)
※自動車保有の可否の詳細はこちら - 敷金
- 退職金(見込み額の8分の7相当額)等々
※預貯金の合計が20万円を超えていると、全額換価の対象となります。
※自動車は登録から5年経過していたら(外国車、ハイブリッド車、電気自動車、2500ccを超える排気量車は除く)残すことができるでしょう。
※上記以外の財産でも、保持が必要で換価が不適切であることを裁判所に認めてもらえれば残すことができます。
自由財産に不動産は含まれません。
自己破産には個人再生のようなローン返済中の家を保持できるような救済制度はありません。
債務者名義の持家は基本的に処分(競売)されることになります。
競売に関する詳細はこちら
自己破産手続きの種類
自己破産には次の2種類があります。どの手続きで進めるかは、申立後に裁判所が決定します。
同時廃止
申立人に返済にあてる財産や破産手続費用が無い場合、財産を換金して返済にあてる手続(破産手続)が不要になるので、自己破産の申請と同時に破産手続きを廃止します。
※同時廃止手続きで破産開始が決定されると、換価処分等の精算手続きは行われませんので申立書に記載している定期預金の引き出しや有価証券等の売却が可能になります。
管財事件
財産がある場合、清算して返済にあてる手続(破産手続)が必要になります。
その手続を破産者に代わってする人を管財人と呼び裁判所が選任します(管財人費用が必要になります)。
このように管財人によって破産手続きをすることを管財事件といいます。
福岡地裁は、管財事件に振り分ける基準を以下のように示しています。
以下のいずれかの項目の金額が20万円を超える。
- 預貯金(申立前の給与・年金を原資とする普通預金は除く)・預け金
- 保険契約解約返戻金
- 居住用家屋以外の敷金等返還請求権
- 退職金の8分の1
- 自動車(登録後5年が過ぎたものは除外、ただし、外国車、電気・ハイブリッド車、排気量2,500cc超えは対象)
- 家財道具その他の動産(差押え禁止物は除く)
- 債権、有価証券その他の財産権(申立直前の給与・年金を原資とする普通預金も含む)
また、現金、預貯金、預け金の合計が33万円を超える場合も管財事件となります。
上記以外でも、管財事件に振り分けられる場合があります。
どのような場合に管財事件になりやすいかの詳細はこちら。
財産処分の事例
自由財産を超える部分は、借金の返済に充当することになります。
財産状況による手元に残せる財産、裁判所に差し出す財産の事例を参照ください。
事例1
保有財産:現金10万円、預金15万円のケース
現金は99万円以下、預金も20万円以下といずれも自由財産の範囲内なので、処分の対象とはならずそのまま保有できます。
また、合計で33万円以下なので、管財事件ではなく同時廃止となるでしょう。
事例2
保有財産:現金20万円、預金18万円のケース
いずれも自由財産の範囲内なので換価処分の対象にはならず保有できますが、合計で33万円を超えているので管財事件となり、約20万円の予納金が必要になります。
事例3
保有財産:現金120万円、退職金見込額800万円のケース
現金のうち21万円(=120万円-99万円)と100万円(=800万円 x 1/8)が換価処分の対象となり、計121万円(管財事件の予納金含む)を納付することになります。
上記は基準に従った場合の事例ですが、裁判所が独自の判断で同時廃止適用ケースを管財事件として扱う場合もあります。
自己破産申立に必要な書類
自己破産手続の申立は、住所地を管轄する地方裁判所にします。
裁判所所定の申立書と共にいろいろな書類を提出しなければいけません。
自己破産申立前にしてはいけない事
自己破産すると何もかもとられてしまう・・との思いで、破産する前に自分の財産を親族に渡しておく、預かってもらう、と考える方がいらっしゃいますが、そのような行為はお控えください。
破産手続妨害行為とみなされ、手続自体が不許可になるだけでなく、最悪、詐欺破産罪として懲役(10年以下)、罰金(1,000万円以下)の刑が科せられるおそれがあります。
- 財産を隠匿または損壊する。
- 財産を第三者に譲渡したり、貸し付けたように装う。
- 財産の現状を変えて価格を故意に下げる。
- 自己破産前提で事前に返済する意思なく借金をする(詐欺罪にとわれます)等々。
自己破産不許可事由
自己破産には以下のような不許可事由が法律で規定されています。
- 債権者を害する財産の隠匿、損壊
- 破産前提での借金
- クレジットカードで購入した商品の現金化
- 特定債権者への優先弁済
- 浪費又は賭博その他の射幸行為による債務
- 債権者名簿の不実記載
- 過去7年の内に自己破産をしている
注意すべきは➁と⑥です。
自己破産しても身内や知り合いからの借金だけは返したい・・と思まれれる方がおられます。
司法書士が受任した時点から返済をストップするので、その間に身内や知り合いからの借金だけを返したり、そうするつもりで債権者名簿に記載しなかったりするような行為は、自己破産手続きが不許可になるおそれがあります。
自己破産は債権者からの借金をゼロにする手続ですので、全債権者を平等に扱うことが原則です。
身内でも債権者にはかわりないので、特別扱いをすることは認められていません。このような行為は「偏頗弁済」とみられ免責の申立が不許可になる原因になります。
また、過去7年の内に自己破産している方は、免責不許可になる可能性が高いです。
※不許可になる事例
- ギャンブルやキャバクラ等で浪費し借金を重ねたのに、ギャンブルは一切やってないと虚偽の申立をした。
- 管財人への報酬支払を怠った。裁判所の呼び出しや債権者集会へ出席しなかった。
- 完全に返済不能状態であるのに、返済する意思なく借金を繰り返していた。
浪費又は賭博その他の射幸行為について
不許可事由の中で多くの方が気にされるのは、浪費、賭博、射幸行為による債務です。
具体例としては、パチンコなどのギャンブル、キャバクラなどでの散財、株やFXでの損失などが該当します。
これらの行為よる借金は免責不許可事由ではありますが、過度で悪質でなかったり、反省して生活をやり直そうとする姿勢がある場合は、裁判官の裁量で免責許可になります。
不許可事由があれば必ず不許可になるというわけではありません。実際、ギャンブルが原因であっても、多くのケースで免責許可となっていますので、不許可事由があっても諦めずにご相談下さい。
ただし、債務整理依頼後も隠れて借金を続けていたり、隠していた金銭で破綻の原因となった行為(ギャンブル、キャバクラ等での浪費、高額ショッピング等々)を続けていたりしたら、不許可になるおそれ大です。隠してもお金の流れで発覚しますので、そのような行為は絶対にしないで下さい。
自己破産が不許可になったら
自己破産は最後の手段なので、不許可になるケースはあまりありません。ギャンブル等の不許可事由があっても、しっかり反省して再出発を目指す陳述書を提出すれば、多くは裁判官の裁量により免責許可されます。
しかし、不許可になる場合はあります。
その場合、再度、裁判所に自己破産を審査してもらいたいときは、1週間以内に不許可を出した地裁に即時抗告します。
このとき、再度審査をお願いする理由を提出しなければいけません。不許可事由がないことや、不許可事由はあるが今までの生活を改めやり直すため努力していることを示し、再審査をお願いすることになります。
また、手続の変更も検討します。自己破産のような不許可事由がない個人再生手続が考えられますが、収入がないと認められないので、無職の方であれば職に就くことが必要になります。
不許可になると、役所で管理されている「破産者名簿」に記載されます。
破産者でないことを証明(身分証明書)してもらうために役所に申請した場合、役所はこの名簿を確認して発行します。
自己破産手続き中の人は、警備員や宅地建物取引士の職に就くことはできません。会社は採用の際、破産者でないことを証する書面の提出を求めることがあり、役所に発行してもらうことになります。
この名簿は非公開で一般の方が見ることはできないので、この名簿に載ったことで他人に自己破産のことを知られることはまずありません。
この名簿には、不許可や取消しになった人、申立が却下、取下げた人が載り、申立後、許可、確定した人は載ることはありません。
不許可になって破産者名簿に記載された場合、名簿から名前を削除するには、個人再生手続をするか、借金を全部返済する必要があります。ただし、何もしなくても10年経過すれば削除されます。
自己破産したらどうなる
「自己破産」をしたら、その後の生活がどうなるか心配、と不安に感じる方も多いです。
基本的に不便な方向に大きく変わることはありません。
むしろ、今まで悩まされていた毎月の返済のためのお金の工面、督促の電話等々から解放されるプラスの面の方がはるかに大きいです。
また、自己破産したら戸籍に記載される、選挙権が停止される、会社に通知される等々と誤解されている方もいらっしゃいますが、そのような事もありません。
自己破産後の生活に関する詳細はこちら
自己破産で就けなくなる職業
自己破産の手続の過程で、職種によって一時的に就けなくなる場合があります。
一般的な会社員、公務員の方が対象になることはありませんが、警備員等特定の職種は手続が終了するまで就けなくなります。
自己破産関連記事
初回のご相談は無料です。
お悩み事をご相談下さい。
ご相談の予約はこちら
TEL 092-707-0282
電話予約 9:00~20:00(平日・土)