借金の保証人にはなるな。
ハンコと押すな。
よく聞く言葉ですね。
保証人とは、借りた人が返済できなくなった場合に、その人の代わりに返済する人のことです。
借りた人がきちんと返済し完済すれば何の問題もないのですが、滞納したり返済をせずに行方不明になったりすると、自分が借りたお金でもないの返さなければいけないことになります。
このように保証人になるということは、非常にリスクのある行為ですが、保証人といっても単なる「保証人」と「連帯保証人」は違うことを知らない方は多いです。
保証人について
保証人と一概に行っても、身元保証人、物上保証人、金銭に関する保証人があります。
ここでは、金銭に関する保証人についてご説明します。
まず、知っておくべきことは、「保証人」と「連帯保証人」は違う、ということです。
連帯保証人のことを略して保証人という、と思われているかもしれませんが、法律的観点から見れば「保証人」と「連帯保証人」は異なります。
借主が返済できなくなったら代わりに返済しなければいけない点は同じですが、債権者に対する立場や返済責任の範囲が両者では異なります。
昔、事業用貸金業者が保証と根保証の違いを悪用して、保証人には知らせないまま借主に追加で多額の借金を負わせて破綻させ、保証人の財産を差押えて回収するという手法が社会問題になりました。
はなから保証人の財産をターゲットにした極めて悪質な行為だと思いますが、現在は法律も改正されそのような事はできないようになっています。
このように、知ると知らないで大きく人生が変わってしまうこともあります。
保証人にならないことが一番ですが、いろいろな事情で保証人になることもあります。
一概に保証人と言っても「保証人」と「連帯保証人」は、法的な地位、責任範囲は異なります。
ここでは、その違いについてご説明します。
連帯保証人
連帯保証人になるということは、借主が返済できなくなったら、借主と全く同じ立場で返済する義務を負います。
つまり、借主が返済できなくなったら、自分が借金したのと同じ様に返済義務を負うことになります。
借りたのは債務者だから、まだ債務者には財産があるから取り立てろ、債務者名義の財産があるからそれを差押えろ等々を債権者に主張しても、債権者には何の効果もありません。
債権者は、債務者名義の土地があっても、連帯債務者名義の土地の方を差押えて競売にかけることができます。
連帯保証人になるということは、債務者と一体になる、自分が借りるのと同じと思ってください。
保証人
「保証人」は、「連帯保証人」とは異なります。
借りた人が返済できなくなれば代わって返済することは同じですが、「連帯保証人」より法的責任が異なります。
「保証人」には「連帯保証人」には認められない「催告の抗弁権」、「検索の抗弁権」、「分別の利益」という3っの権利が与えられています。
催告の抗弁権
「催告の抗弁権」とは、債権者が保証人に返済請求してきた場合、まず、先に債務者に請求してください、と主張でき、債権者はそれに従わなければいけません。
民法には、「債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。」と規定されています。
ただ、言葉のとおり、債権者が債務者へ催告すればよいだけなので、少しの時間をかせぐことはできますが、いずれ返済を請求されることになるので、抗弁権と言っても効果はあまりありません。
検索の抗弁権
先に示した催告の抗弁権に比べて、「検索の抗弁権」は保証人にとって有効な対抗手段になります。
民法453条に「債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。」と規定されています。
債権者は保証人の財産の差押えもできるので、保証人の生活に深刻に影響します。
そこで、保証人は、まず、先に債務者の財産を差押え等を行って借金の回収をしてくださいと主張することができます。
条文にあるように主張するには、債務者に財産があることを保証人が証明しなければいけませんが、債権者は保証人からこれを主張されれば、債務者に対して示された財産の回収手続きをした後でなければ保証人に請求できなくなるので、保証人にとっては有効な対抗手段になります。
保証人が証明したにも関わらず債権者が適切に手続きをしなかったために回収できなかった場合、保証人はその額の返済を拒否することができます。
分別の利益
分別の利益は、保証人が複数人にいる場合にのみ生じます。
「保証人」が複数人いる場合、各保証人の保証負担は、頭数で分別されることになります。
借金が1000万円で「保証人」が2人いる場合、各保証人の返済責任は500万円(1000万円÷2)になります。
「連帯保証人」には、何人、何十人いようとも、各連帯保証人は全額返済の責任があるので、債権者が1人の連帯保証人をターゲットに全額返済を求めることができますが、「保証人」に対しては保証人の数で割った分しか請求できません。
ただし、この分別の利益を知っている方は多くありません。
債権者は保証人には分別の利益があるにもかかわらず、しれっと複数いる「保証人」の1人に対して全額を返済するように求めることがあります。
この場合、しっかりと分別の利益を主張して、責任範囲の分だけを返済するようにしましょう。
まとめ
「連帯保証人」については、一般的に思われていることと同じでしょう。
債務者と同様の返済義務を負い、最悪、預金から家まで差押えられてしまうおそれがあることもご存知の方は多いです。
「連帯保証人」という立場は債務者と全く同じになるので、返済以外で法律的に何か手段をとることは難しく、返済方法に関して債権者と交渉するというような形になります。
対して「保証人」であれば、「検索の抗弁権」や「分別の利益」を活用して負担を軽減できる可能性がでてきます。
保証人として債権者から返済請求されたら、専門家に相談されることをおススメします。