自己破産前の財産移転はバレる

借金が膨れ上がり、もうどうしようもない状態。
自己破産するしかないが、ある程度の財産がないと今後の生活が不安でたまらない。
であれば、事前に財産を妻に、子供に、親族に、知人に移転して預かってもらおう・・と考える方もいらっしゃいます。

このような行為をしたくなる気持ちも分かりますが、自己破産は借金をゼロにする手続きです。
貸している側は、貸したお金を回収することができなくなります。
貸手に大きな負担を強いる一方、借り手いる側が返済できる財産があるにもかかわらず返済せずに隠ぺいする行為は認められません。

隠ぺい行為をするとどうのようになってしまうか司法書士が解説します。

財産隠ぺい行為

自己破産前に行われる財産隠ぺいとして、親族に財産移転されることが多いです。
隠ぺいされる財産としては、

  • 現金・預貯金
  • 不動産
  • 自動車
  • 保険の解約返戻金
  • 株券等の有価証券
  • 高額な動産(宝石等)等々

上記の財産を自己破産手続きを申立る前に第三者に移転して、自己破産手続きにおいて返済に充てられることを回避しようとする行為が隠ぺい行為に該当します。

隠ぺい方法

隠ぺいにの手段としては、現金化して第三者に預かってもらう、不動産や自動車の名義を第三者に変更する等があげられます。
不動産や自動車に関しては、離婚を名目に財産分与として妻名義にする、贈与や適当な価格で売買したことにして一時的に第三者名義に変更したりすることも多いです。

ただし、このようなことが行われるおそれがあることは、裁判所も破産管財人も十分把握しています。
ばれないだろうと安易な考えで隠ぺい行為をしてしまうと、自己破産手続きが認められず、更に、詐欺破産罪等の「犯罪」として追及されるおそれもあります。
元芸能人が強制執行を免れるために、妻と離婚し財産分与として多くの不動産を妻に渡した行為が財産隠しの偽装行為として強制執行妨害罪で逮捕されています。
そのことをしっかりご認識下さい。

財産隠しとして、第三者と通じて一時的に不動産をその人の名義に変更した場合、外形的には当該不動産は第三者ものとなります。第三者は勝手に別な人に売却することも、当該土地を担保にして銀行からお金を借りることもできてしまいます。このように財産移転の仮装は、使い込み等の別のトラブルをまねくおそれがあります。

裁判所・破産管財人による調査

裁判所や破産管財人はプロです。財産隠しについての知識も十分持ち得ています。
さまざまな資料、記録、書類から財産の流れをチェックし、おかしな点を見つけるのでごまかすことは非常に困難です。

裁判所による調査

自己破産申立には、さまざまな資料、書類を提出しなければいけません。
それらの資料を裁判官がチェックし、必要と判断したら追加の資料の提出を指示されます。
また、裁判官は破産審尋、債権者集会、免責審尋を通して直接本人にいろいろな質問を行い矛盾点がないか確認します。
このように書くと、裁判官から厳しく質問されるのか・・・・と思われるかもしれませんが、そんなことは全くありません。
やましいことがなければ、聞かれたことに正直に答えれば良いだけのことですのでご安心下さい。

破産管財人による調査

破産管財人は破産申立人の破産手続きを遂行する人です。
申立人のために動く人ですが、反面、調査員として財産隠し等の不正がないかも調査します。

破産管財人が選任されると、申立人宛の郵便物は全て破産管財人の所へいったん転送されます。
これは、郵便物から申告していない財産がないか、債権者がいないかをチェックするためです。
消費者金融等からの督促状、金融機関、証券会社、保険会社、不動産会社等からの郵便物がないかを確認します。

定期的に行う申立人との面談で財産隠しが疑われるようなおかしな点を見つければ、金融機関等に過去からの資料、情報の提出を求めることもできます。
調査されるのは1~2年前だけだろうと思われている方もおられますが、破産管財人が必要と思えば更にさかのぼって調査することもあります。
過去からの銀行口座の預金の流れ、収入、支出を突き合わせて、多額の現金を隠し持っていることが発覚することもあります。

生命保険を解約して返戻金を取得していた場合、保険に加入していたことも、解約したこともだまっていれば分からないだろうと返戻金の存在を申告せずにいたが、生命保険会社からの郵便物や源泉徴収票に生命保険料の控除が記載されていた等々でバレたりします。

これくらいバレないだろうと思っても相手はプロです。バレると思って下さい。

隠ぺいが発覚すると

財産隠しは、自己破産の免責不許可事由になります。
つまり、自己破産が認められないということになります。
免責不許可事由があっても裁判官の裁量により免責が許可されることも多いのですが、悪質で意図的な財産隠しと判断されたら免責許可は難しいでしょう。

さらに、詐欺破産罪という刑事事件として逮捕されるおそれもあります。
以外にも、重要財産開示拒絶等の罪、業務や財産状況に関する物件の隠滅等の罪、審尋における説明拒絶等の罪、破産管財人等に対する職務妨害の罪等々の破産法上の罪にとわれる可能性があります。

まとめ

自己破産は、いわば、生活再建の最後の砦です。
もう返済はできない、今のままでは日常生活が成り立たない、そんな状態で行う最後の手段です。
そんな状態で、今後の生活のためにと行った財産隠しが発覚して自己破産自体ができなくなれば本末転倒です。

自己破産をしたら丸裸になるわけではありません。
自由財産の拡張という制度を利用すれば最大99万円までは手元に残すことができます。
正直に全てを申告して裁判所から免責許可をもらい、はれて借金のない新たな生活を始めて下さい。

不動産等どうしても残したい財産があるのであれば、自己破産以外の債務整理手続きを検討しましょう。