アパート

借金の返済不能に陥った場合、債務整理の究極の方法として自己破産手続きがあります。
自己破産が裁判所に認められると、銀行や消費者金融等からの借入返済は免責(チャラにする)になります。

自己破産で滞納している家賃はどうなる?

賃貸住宅の賃料を数か月間滞納している場合も、金融機関からの借金と同様の扱いです。
滞納賃料は借金(債務)として扱われ、大家さんは債権者になります。
自己破産や個人再生手続きでは全ての債権を整理対象にしなくてはいけないので、手続きにおいて滞納している賃料も債権目録に記載し裁判所に報告することになります。

最終的に裁判所からの免責許可が確定したら、滞納していた賃料もチャラになり払わずに済みます。

滞納家賃で自己破産でチャラにしたら強制退去?

自己破産により数ヶ月滞納した家賃を支払わずに済むことになりますが、大家さんが怒って「今すぐ、出ていけ!」と言われたら出て行かなくてはいけないのか?
気になるところだと思います。

結論から言うと、大家さんは自己破産を理由に賃貸借契約を解除して部屋から出ていけと言うことはできません
これで安心、今まで通り住み続けられる、、というと、そうでもありません。

大家さんの対応

大家さんの中には、「自己破産したのだからしょうがないですよね、滞納していた分は諦めます。今後は賃料をきちんと払って下さいね」という優しい方もおられるかもしれません。

しかし、現実はそうあまくないです。

長期にわたって滞納された賃料を合法的に踏み倒されたあげく、また滞納するんじゃないかと不安を抱えながら部屋を引き続き貸すのはイヤだと考えられる大家さんもおられます。

もちろん、賃貸借契約は一方的に大家さんの都合で解除できるものではありません。
先ほども述べたように、賃借人の自己破産を理由に賃貸借契約を解除することは、まず、認められません。

法律は賃貸借契約の解除が認められる要件として、転貸しや契約した目的使用とは全く異なる目的使用した等々の貸手と借手の信頼関係を破壊するような背信的行為をあげています。

そして、長期の家賃滞納も信頼関係の破壊に該当します。
大家さんがこれ以上貸したくないと考えたら、自己破産理由ではなく長期家賃滞納による信頼関係破壊に基づく賃貸借契約解除を行うおそれがあります。

長期滞納による賃貸借契約解除

〇ヶ月間家賃滞納したら信頼関係破壊による契約解除が認められる、というような決まった滞納期間はありません。
使用方法等他に問題がなく滞納だけが問題の場合、最低3ヶ月が一つの目安になります。
1,2ヶ月の滞納だけで契約解除が裁判所で認められることは難しいです。

最低3ヶ月と言いましたが、3ヶ月であれば必ず解除が認められるかというとそうでもありません。
裁判所に解除が認められる可能性が高くなるということです。

大家さんが賃貸契約解除する場合、まず、解除する旨及びいつまでに退去するようにとの通知をします。
期日までに退去しなければ、裁判所に明渡しの訴訟が起こされるでしょう。
敗訴が確定すれば、強制的に追い出されることになります。

追い出されないための対応

滞納しないことが一番なんですが、自己破産に追い込まれるような状況では家賃を滞納なく払い続けるのも難しいでしょう。

家賃を滞納している場合の対処方法としては、
1.第三者(親等の親族等)に払ってもらう。
2.申立前に返済する。
3.大家さんに契約解除をしないようにお願いする。
これらが考えられます。

第三者に支払ってもらう

可能であれば、親族等の第三者に滞納分を支払ってもらいましょう。
家計を同じにしていない親族に依頼することが良いです。
同居等で家計を同じにしていると、お金に色はないので破産者のお金で返済しているとみられ偏頗弁済ととられてしまうおそれがあります。

申立前に返済する

返済すれば滞納は解消されるので契約解除の心配はなくなります。
しかし、いろいろな借金の返済ができなくなり自己破産を申し立てるような状況で滞納している家賃だけを返済してしまうと、他の債権者を差し置いて大家さん(=大家さんも債権者です)だけを優遇している(=偏頗(へんぱ)弁済と言います)として自己破産の不許可事由に該当するおそれがあります。

ただし、住居は生活の基本です。
家賃の支払いが偏頗弁済に該当するとしても生活を守るための行為なので悪質の程度は低いと言えます。
実際は、自己破産自体が裁判所によって否定されるまでは至らないのではと思われます(偏頗弁済には該当する以上、不許可になることがないとは言えません)。

大家さんに契約解除しないようにお願いする

誠意をもってお願いすることで契約解除をおもいとどまってくれる優しい大家さんもいらっしゃるかもしれません。
しかし、それを期待するのは難しいです。
何度督促しても払ってもらえなかった大家さんは、きつい思いをしながら長期間過ごされていました。
そこに、「長期滞納分は自己破産するから払いません、でも、今後はきちんと払いますから契約解除しないで下い」との申し出をされても、「分かりました」と簡単には了承できないでしょう。

そこで、例えば、「自己破産後に滞納していた家賃は分割で返済するので、賃貸借契約の解除は勘弁いただけないでしょうか」と申し出ることで大家さんの理解をえることも考えられます。
※本来、自己破産で免責許可が確定したら滞納していた家賃は払う必要がありませんが、任意で払うことは問題ありません。