競売

自己破産をすると、自由財産(保持できる財産で総額99万円まで)を除いて基本的に財産は換価処分され、手続きの費用に充当されます。

換価できる財産を保有してい場合、自己破産手続きの中でも管財事件となり、破産管財人(破産手続きをする人で裁判所が弁護士を選任します)が換価処分を行います。

自己破産者が家を所有していれば、家は換価処分(任意売却又は競売)を前提に破産管財人の管理となります。

家を換価処分する場合、「任意売却」と「競売」の2つの方法がありますが、ここでは「競売」手続きについてご説明します。

競売手続き

自己破産手続きの中で持家が競売される場合、持ち家に(根)抵当権が設定されているかで変わります。

設定されていれば(債権額が未済)、自己破産手続きとは別扱いになります。

この場合、自己破産による換価処分よりも抵当権が優先されるので、抵当権者により競売の申立が行われ、競売によって得た売却金は抵当権者への債務返済に優先的に充当されることになります。
※管財人が抵当権者と交渉して抵当権を抹消した上で換価処分する場合もあります。

対して、抵当権が設定されていない家は、破産者の財産として破産財団(返済等に充当する破産者の財産)に組み込まれ、管財人が換価処分の一環として「競売」(又は任意売却)をすることになります。

管財人によって裁判所(不動産所在地を管轄する地方裁判所)に競売の申立が行われ、裁判所より競売開始決定がされることにより手続きが開始します。

競売にはいろいろな手続きがあり、申立後すぐに競売(入札)が行われるわけではなく、数ヶ月の期間を要します。

現況調査・評価

裁判所は、対象不動産の状態、価値を把握し適正な換価手続きを行うために、執行官に対象不動産の調査を命じます。

できる限り詳細に調査を行うため、敷地内はもとより家屋にも立入調査します。

破産者がまだ居住している状態でも、立入調査を拒むことはできません。

また、裁判所は評価人を選任し、対象不動産の評価を命じます。

評価人は、対象不動産の現況、近傍同種の不動産の取引価格等々を考慮した上で評価を行います。

この評価は、売却基準価格を決定する際の基礎となります。

売却基準価格・買受可能価格

裁判所は、評価人の評価に基づいて不動産の売却額の基準となる「売却基準価格」を定めます。

この価格は、買受可能価格を決める際の基準となります。

「買受可能価格」は、対象不動産を買受(落札)しようとする場合の基準価格になります。

買受をしようとする者は、売却基準価格から10分の2に相当する額を控除した価格以上で入札申入れをすることになります。

これは、不当に安く売却されることで損害を受ける債権者や所有者を保護するために規定されています。

落札・売却決定

落札された後、裁判所は売却不許可事由があると判断した場合は、売却を不許可とします。

なければ売却決定となり、その後、買受人が代金を裁判所に納付します。

買受人は、買受額を全額納付した時に不動産を正式に取得することになります。

明渡し時期

競売で対象不動産に居住している破産者に大きくかかわるのは、いつ、家を出て行かなければいけないか、明け渡さなければいけないか、という点です。

競売手続きの間は、強制的に退去させられることはありません。

買受人が決まり代金が支払われるまでには、3~6ヶ月程度かかるので(1年もかかる場合もあります)、その間は居住し続けることができます。

最終的に買受人が買受金を納付した時に家の所有権は買受人に移転するので、買受人から退去要請があれば従わざるを得ません。

粘っても、買受人は裁判所に「引渡命令」の申立を行い、執行官によって強制的に退去させられることになります。