福岡地裁

自己破産は、全国の地方裁判所で行います。
最高裁判所を頂点とした司法機関である裁判所で行われる自己破産は、どこでやっても当然同じと思われがちですが、実は少し異なります。

手続き自体は同じですが、その地域の特性や慣習が考慮されているのか、地域によって若干異なります。

福岡県で自己破産をする場合、福岡市の六本松にある福岡地方裁判所又はその支部が管轄になります。
福岡市であれば六本松の福岡地方裁判所に、北九州市であれば福岡地方裁判所小倉支部に申立ることになります。

そして、この福岡地方裁判所にも、「福岡地方裁判所基準」というものがあり、独自に運用されています。

今回は、自己破産における「福岡地方裁判所基準」について、司法書士が解説します。

自己破産手続きの流れ

自己破産では以下のような流れで各手続きが行われます。

裁判所に自己破産申立書を提出
管轄の地方裁判所に申立書に所定の書類、資料を添付して提出します。通常、同時に免責申立書も提出します。
破産手続き開始決定
地方裁判所が申立書を確認し、問題なければ破産手続きを開始する決定をします。
破産審尋
裁判所が必要と認めた場合、裁判官により審尋(破産審尋)が行われことがあります。自己破産の原因や現在の状況、今後の見通し等を裁判官から聞かれます。
手続き方法の決定
「同時廃止」か「管財事件」のどちらで行うか裁判所により決定されます。
破産管財人との面談・債権者集会
管財事件になった場合、定期的に破産管財人と面談することになります。
現在の生活や積立金の状況等がチェックされます。
また、裁判官を含めて債権者集会が行われますが、通常、消費者金融や銀行のような法人債権者は出席しません。
免責審尋
免責(借金をゼロ)決定前の裁判官による審尋です。自己破産におけるいろいろな注意事項を説明されるような形で行われます。同時廃止の場合、ケースによっては行われないこともあります。
免責許可決定・確定
免責許可決定、確定により手続終了です。

この流れは全国統一です。地方裁判所で違いはありません。

手続き自体に違いはないのですが、その運用方法に地域によって違いがあります。

同時廃止と管財事件の分かれ道

自己破産手続きを同時廃止でするか管財事件とするかで、債務者にとって金銭負担、時間的拘束、行動制限等、その後の手続きの流れが大きく異なってきます。

同時廃止になれば、金銭的な債務者負担は申立時の費用だけになります。裁判所に支払う費用(2万円程度)と司法書士に支払う報酬だけです。
また、裁判所へは申立後に行われる破産審尋と最終段階の免責審尋の2回、平日に裁判所に行くことになります(これらの審尋はケースによって行われないこともあります)。

対して管財事件になれば、債務者の負担が増えます。
金銭的には管財人への報酬として約20万円の費用(予納金)が新たに発生します。ただし、申立時に20万円のお金がない場合は、手続き期間中に裁判所に指示された額を毎月積立して、そこから支払うことになります。

裁判所へは、破産審尋、免責審尋に加えて、債権者集会へ出ることになります。これに加えて、定期的(月1程度)に破産管財人である弁護士と事務所で面談(現状報告)することになります。
また、管財事件になると、免責が決定するまでの間、日常生活の上で以下のような制限を受けることになります。
1.郵便物は管財人の所へ郵送されます。そして、管財人との面談時に郵便物を受け取ることになります。
2.引越しや2日以上の旅行は、事前に許可が必要になります。

仕分けとしての福岡地裁基準

「同時廃止」「管財事件」をどのような基準で仕分けするか。

福岡地方裁判所では独自の基準を設けて仕分けをしています。
※独自の基準と言っても他の地裁と全く異なる基準というものではありません。

福岡地裁基準

以下のいずれかの項目で金額、価値が20万円を超えると管財事件とされます。

  • 預貯金(申立前の給与・年金による生活用普通預金は除く)・預け金
  • 保険契約解約返戻金
  • 居住用家屋以外の敷金等返還請求権
  • 退職金の8分の1
  • 自動車(登録後5年が過ぎたものは除外、ただし、外国車、電気・ハイブリッド車、排気量2,500cc超えは対象)
  • 家財道具その他の動産(差押え禁止物は除く)
  • 債権、有価証券その他の財産権(申立直前の給与・年金を原資とする普通預金も含む)

また、現金、生活用の預貯金、預け金の合計が33万円を超える場合も管財事件となります

「20万円」が基準となっています。管財人費用と同じですね。
基本的に管財人費用が捻出できる場合は、管財人をつけるということになります。

やはり、返済できなくなるまで借金を増やしてしまったこと、借金をゼロにするという債権者には大きな影響を与えることを考慮すると、裁判所は破産管財人をかかわらせてしっかり債務者の再生を図ることに重点を置いているようです。

上記基準はあくまでも財産面から見た福岡地裁基準です。上記基準以外でも、特に免責不許可事由に該当するような場合は、それをもって管財事件となることがあります。

自己破産しても残せる財産の福岡地裁基準

自己破産をしたら何もかもとられて丸裸にされてしまうのではと思われている方もいらっしゃいます。
しかし、そんな事をしたら次の日から生活できなくなり、誰も自己破産しようとする人がいなくなってしまいます。

とは言っても、債権者にとっては貸していたお金がチャラになってしまうので、債務者が財産をもったまま自己破産することに納得できないでしょうし、財産から出来る限り返済して欲しいと思うのも無理ありません。

そこで、自己破産した場合、手元に残せる財産を以下のように規定しています。

  • 現金99万円まで(預金が含まない) ※直前に預金から引出した現金は認められない場合があります。
  • 新得財産(自己破産開始決定後に取得した新たな財産)
  • 差押が禁止されている財産(生活に必要な物・・例えばタンス、ベッド、洗濯機、冷蔵庫、仕事に必要な道具等)
  • 給与の4分の3(上限33万円)及び退職金の4分の3
  • 生活保護費、年金、失業給付金等

上記の財産は債務者の自由にできるものとして「自由財産」と言います。
以外の財産は、基本的に管財人によって処分(手続費用や返済に充当)されることになります。

しかし、中にはどうしても残しておきたいもの、処分することで債務者が大きなデメリットを被ることになる等の理由により処分しないように裁判所にお願いすることができます。「自由財産」を増やすことになるのでこれを「自由財産の拡張」と言います。

そして、福岡地裁はこの「自由財産の拡張」を認める上での基準を以下のように規定しています。

福岡地裁の自由自財産の拡張基準

 

  • 預貯金・定期預金(20万円以下)
  • 保険の解約返戻金(20万円以下)
  • 自動車(20万円以下)
  • 敷金
  • 退職金(見込み額の8分の7相当額)等々

※自動車は登録から5年経過していたら(外国車、ハイブリッド車、電気自動車、2500ccを超える排気量車は除く)残すことができるでしょう。
※上記以外の財産でも、保持が必要で換価が不適切であることを裁判所に認めてもらえれば残すことができます。
※福岡地裁では、下記項目は拡張の申立なしに換価等をしない財産との取扱いになっています。ただし、裁判所は管財人の意見を聴いて相当と認める場合は換価の対象となります。