借入

返済不能状態になっているのに自己破産をすることに躊躇する。

躊躇する理由は人様々ですが、借入の際に金融業者にウソの申告した、申込書に実際と異なることを書いたので、ばれるのが怖くて手続きできない、という方もおられます。

自己破産の手続は裁判所でするので、怖くて手続きができないと思われることもあるでしょう。

しかし、内容にもよりますが、ウソの申告で借入をしていたら自己破産が必ず不許可になる、というものではありません。

借入の際にウソの申告

お金が必要になり切羽詰まって、金融会社に虚偽申告して借りる。

やってはいけない行為ですが、名前や生年月日、住所、職業、勤務先、年収等を実際とは偽って借入した場合、「詐術をもって借入をした」ということになります(もちろん、単なる書き間違いであれば、詐術に該当しません。)。

内容によっては、「詐欺罪」に問われるおそれもありますので気を付けましょう。

自己破産の申立

虚偽申告でつくった借金を自己破産できるかが問題になります。

自己破産の申立をする際、いろいろな書類を裁判所に提出しますが、福岡地方裁判所の場合、裁判所所定の申請書に「申立て前1年以内に,他人の名前を勝手に使ったり,生年月日,住所,負債額,収入,財産等を偽ったりして,借金やローン等を組んだことがありますか(架空ローンを含む。)。」という質問事項があります。

1年以内に該当するような借入があれば、借入先、金額、内容を記載することになります。

ここで、あるのに「ない」と回答してしまうと、虚偽を更に繰り返すことになりますし、裁判所は通帳等や聴き取りでお金の流れからおかしな点を探り当てます。

裁判所相手に虚偽がばれたら、自己破産自体が不許可になったり、最悪、破産法265条により破産詐欺罪にとわれるおそれさえあります。

過去にした債権者への虚偽申告はなかったことにはできませんが、自己破産の申立においては正直に全てを申立ることが大切です。

免責不許可になるか

破産法252条に、自己破産申立が不許可になる事由を11項目あげています。

その中に以下の3っの項目があります。

  • 破産手続開始の申立てがあった日の1年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
  • 業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
  • 破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。

金融業者に虚偽を申告して金を借りたり、裁判所に虚偽を申告して自己破産しようとした場合、上記の不許可事由に該当するので、基本的には自己破産は認められないことになります。

裁量許可

虚偽の申告は不許可事由に該当するのですが、不許可事由に該当すれば必ず自己破産が不許可になるかというとそうではありません。

不許可事由を規定している条文の2項に「不許可事由に該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。」と規定しています。

裁判官は、個別の事情を斟酌した上で自己の裁量で免責(自己破産の許可)することできます。

よって、虚偽の申告をしてお金を借りているような場合、この裁判官の裁量をによる許可を求めて申立をすることになります。

当時の経済状況、虚偽申告をして借入した事情、その時の心境、現在は深く反省していること、自己破産により生活を再建したい想い等々を正直に「上申書」に書いて、裁判官にうったえることで、裁量免責を目指します。

まとめ

過去にしたウソによる借入をなかったことにすることはできません。

自己破産の際にその点を隠して申立をしてしまうと、裁判所相手にバレた時に自己破産という最後の救済手段を失う危険があります。

自己破産には11項目に及ぶ免責不許可事由がありますが、過去のデータで自己破産が却下等によりできなかった率は4、5%にすぎません。

この数字を見ると、不許可事由に該当することがあっても、申立内容に虚偽があったり審理において申立人に不誠実な行為があったり等悪質とみられ、自己破産しても改善の余地がないと判断されなければ、自己破産が成立する可能性が高いと言えます。

ただし、正直に上申書を書いて提出したとしても認められないこともある、ということはご留意ください。

こうのような状況での自己破産の申立は、弁護士や司法書士に相談して行うことをおススメします。