現在の収入では返済が不能であることが必要です。返済不能とは財産を全部返済にあてても、なお借金が残り収入等の現状からみて、今後、全部を返済すること不可能である状態を言います。
いわゆる借金は全部免除されますが、滞納している税金・社会保険料・養育費・悪意の不法行為による損害賠償金等は免除されません。
自己破産を理由とする解雇は不当解雇に該当します。ただし、職種によっては一定期間(免責許可がおりるまでの期間)、その職につけなくなります。弁護士・司法書士・税理士等の士業、宅地建物取引主任者、警備員、卸売業、旅行業務取扱管理者、生命保険募集人(生命保険外交員)、風俗営業者が該当します。公務員は該当しません。
例えば、警備員の方で、仕事を辞めたくない方は、自己破産以外の債務整理の検討が必要です。
会社の取締役をしている方はご注意!
取締役が自己破産すると、民法の規定により会社と取締役間の委任契約が自動的に終了し、取締役を退任しなければなりません(退任登記が必要)。退任後、自己破産手続中の方でも取締役に再度就任することは可能です。
破産手続後の生活もあるので、ある程度の財産を残すことができます。この財産を自由財産と呼びます。
自由財産として手元に残せる財産は以下のようなものです。
1. 現金は99万円まで可 ※直前に預金から引出した現金は、現金として認められない場合があります。
2.新得財産(=自己破産開始決定後に取得した新たな財産)
3.差押が禁止されている財産(=生活に必要な物・・例えばタンス、ベッド、洗濯機、冷蔵庫、仕事に必要な道具等)
4.給与・退職金の4分の3(→4分の1は返済に回す必要あり)
5.生活保護費、年金、失業給付金等
ただし、残せるのは総額99万円までです。
自由財産の拡充の申立を行うことで預金の保有も可能です。この申立は、拡張対象の財産が破産者の生活に必要かどうかで判断されます。ただし、その場合でも現金と合わせて99万円の範囲内です。
車や保険を対象に自由財産の拡充の申立をおこない、認められれば総額99万円の範囲内で残すことができます。ただし、この場合、個々の価値が20万円を超えないという制限が加わるので、車の価値が20万円を超えていれば処分の対象になるおそれがありますが、登録から5年経過していたら外国車等高価な車でなければ残すことができるでしょう。保険についても返戻金が20万円を超えないものは残せます。
家に換価価値がない場合以外は、破産者名義の不動産(家・土地)は残すことができません。
銀行系カードローンを利用していれば、その銀行の預金口座は凍結され、以後、預金の引出し、自動引落し・振替ができなくなります。この口座が給与の振込先だったり、公共料金、光熱費、家賃等の自動引落し口座であれば、事前に口座を変えたり、現金支払にする等の変更が必要になります。また、口座に残高があると強制的に返済にあてらるので事前に全額引き出しておくことが大事ですが、この場合注意が必要です。この行為が財産隠しと見られたら、自己破産の不許可事由該当するおそれがあります。引出したお金は、破産費用に限定して使うか、使わずに持っておくか、司法書士の預かり金口座に入金する等の慎重な対応が必要です。新たに口座を開くことは問題ありません。
同時廃止手続であれば制限はありません。管財事件の場合、引越しすることは可能ですが、免責が確定するまでは裁判所の許可が必要になります。
自己破産すると債権者(貸主)は保証人に請求することになります。場合によっては、保証人に対しても債務整理(任意整理、個人再生、自己破産)が必要になるでしょう。
●家族:
裁判所に収入、支出表を提出する必要があります。家単位の収支表の提出が必要なので、家族が働いていたら家族の協力が必要になります。配偶者に収入がある場合、所得証明書が必要で取得のお願いをしなければならないので隠すことは難しいでしょう。率直に現状を家族に話し、協力を得ることを考えてください。同居家族に収入がなく、家計の収支も全部自分で作成することができれば、バレずに済む可能性はあります。
●知人・職場の人:
自己破産をすると国が発行する官報に、あなたの住所と名前がのります。知人がこの官報を見るとバレてしまいますが、一般の方が官報を見ることはありません。官報は官報販売所で売られていますので簡単に買えるものではありません。インターネットでも官報の内容(過去30日分)を見ることができますが、わざわざ用もないのに頻繁に閲覧する人はいないと思います。いずれにしても、バレることは通常ないと思ってい良いです。ただし、官報に掲載される以上、”ゼロ”ではないことは心に留め置き下さい。
自己破産手続開始決定後、裁判所による免責許可が下りない場合、本籍地の市区町村役場にある「破産者名簿」に原則記載されることになりますが、第三者が勝手にその名簿を見ることはできません。その後、免責許可が下りると名簿から名前が抹消されるので、この名簿から周囲にバレることは考えにくいです。
次の場合は、自己破産が知られることになります。
1.会社からお金を借りている
2.親類、知人からお金を借りている
3. 労金、共済組合、互助会からお金を借りている
裁判所から相手に通知されるので、知られることになります。労金等の場合は、裁判所は労金等に通知しますが、これらの機関からの借入れは、通常、返済が給与天引きとなっています。手続中、給与天引き中止され、その旨、会社に連絡されます。そのとき、自己破産により天引きをストップすると会社に伝えられるおそれがあります。伝えられないとしても、急に天引きストップの通知を受けた会社は疑問に思うかもしれません。
もう一つの注意点
自己破産の開始が決定されたら、裁判所にいろいろな書類を提出しなければいけません。会社員の方は退職金見込証明書という書類を提出しなければいけません。会社を辞めた場合の退職金はいくらかとういう証明書です。通常、この証明書は会社が発行してくれますが、普通に頼めば、会社を辞めるつもりかと思われるでしょうし、正直に自己破産のためにと言えば会社に知られてしまいます。この場合、会社に退職金規定があれば、それを元に自分で計算し、規定表のコピーと計算した見込額を提出する方法もあります。
携帯電話料金を滞納していれば、滞納金も自己破産の対象となります。この場合、携帯電話契約は解約されることになります。解約をのがれるため破産前に滞納している電話料金だけを支払うと偏頗(へんぱ)弁済(=特定債権者を優遇した弁済)とみられて、自己破産が不許可になるおそれがあります。
家賃を払っていれば影響ありません。更新時も影響ないでしょう。ただし、管理会社が指定しているクレジットカードで家賃を支払っていて、このカード会社を任意整理の対象にすると管理会社に任意整理したことが知られます。すぐ契約解除されることはないでしょうが、更新時の審査にひっかかるおそれがあります。よって、カード会社を任意整理から外すか、現金支払等他の支払方法に変更するよう管理会社にお願いする必要がありますが、当然その理由を聞かれるでしょうからどう説明するか悩ましいところです。また、転居する際、転居先管理会社から家賃保証会社との契約を求められることがあります。そして、この保証会社が信販系の会社であれば、調べればブラックリストにのっていることが分かるので入居審査に影響するおそれがあります。
公共料金も自己破産の対象になります(下水道代は対象外)。ただし、直近の1か月分だけは支払わなければいけません。自己破産により滞納額をゼロにしても、これを理由に供給を止められることはありません。免責決定後は、通常通り支払わなければなりません。
戸籍、住民票に記録されることはありません。ただし、申立後、免責不許可や却下になった場合、役所の破産者名簿に記録されることになりますが、この名簿は一般の方が閲覧することはできません。
滞納管理費・修繕積立金も対象となり免責(支払い不要)になります。この場合、自己破産によりマンションは競売になり、落札した次の住人が滞納額を支払う事になります。注意点として、同時廃止の場合、開始後に発生する分は破産申立人が支払う必要があります。
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