督促状

突然、全く借りた覚えがない金融業者から借金返済の督促状が来たらどうするか。
多くの方は架空請求だろうと放置されるかもしれません。

架空請求の督促であれば無視しても問題ありませんが、そうでない場合もあるので注意が必要です。

送られてきた督促状に「被相続人」「相続人」という文字があったら架空請求ではない可能性があります。

無視してしまうと自分以外の借金を背負うことになるおそれもあるので注意が必要です。

このような督促状が送られてきたら、どう対応すればよいか?
対処方法を司法書士が解説します。

「被相続人」が記載されている督促状

  • 「被相続人○○」に○○円を貸付けているが返済されていない。
  • あなたは「被相続人○○」の相続人である。
  • あなたは「被相続人○○」の相続人として、債務の法定相続分の支払い義務がある。等々

借りた覚えがないが、このような督促状が金融業者等から送られてきたら、無視するのではなく内容を確認しましょう。

これは、被相続人(故人)が借金を返済しないまま亡くなり、故人の相続人に対して返済を督促してきた可能性が高いです。

相続というと、不動産や預貯金等のプラス財産だけをイメージしますが、借金のようなマイナスの財産も相続の対象になります。

相続があったことを知ってから3ヶ月以内に相続放棄(又は限定承認)をしなければ、借金も含めて全ての遺産を相続することになります。

ただし、相続する借金は全額ではなく、法定相続分に限定されます。
例えば、相続人が母、子2人の場合、母は2分の1、子2人は各4分の1の借金を相続することになります。

確認事項

このような督促状は、債権者が故人の戸籍を調査して相続人に送っているもので、自身が相続人になっている可能性が高いですが、督促状に記載されている「被相続人○○」という人物があなたの親族にいるかを確認しましょう。

全く行き来がない叔父・叔母の相続人になっている可能性もあります。

叔父・叔母に子供がいなかったり、家族が全員が相続放棄をしているような場合、兄弟姉妹であるあなたの親が相続人となり、その親が既に亡くなっていれば、子であるあなたが叔父・叔母の相続人となります。

叔父叔母家族が相続放棄する際、知らせてくれれば良いのですが、行き来がないような状態であればその知らせもなく、知らない間に自分が叔父叔母の相続人になっている、といようなことも起こり得ます。

親族にいなければ大丈夫か

「被相続人○○」と記載された人が親族にいない場合は大丈夫かというと、そう言い切れないところがあります。

養子縁組がなければ、相続関係は血縁の中で生じるので、親族に該当する人がいなければ「相続」は生じていないでしょう。

しかし、血縁関係のない他人間でも、相続に似た関係が生じる場合があります。

民法990条に「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。」と規定されています。

故人が遺言書に「△△に財産の全部を遺贈する」と書いている場合、△△は包括受遺者となり相続人と同じ権利義務を持つことになります。

つまり、この故人に借金があった場合、血縁関係になく自分は相続人でもないのに、包括受遺者として借金を返済する義務を負うことになります。

この場合、借金を回避するには相続人と同じように、自分に遺贈があったことを知ってから3ヶ月以内に相続放棄をしなければいけません。

対処方法

督促の内容が真実であれば、相続人であるにしろ、包括受遺者であるにしろ、以下の2点について検討することになります。

相続放棄

相続放棄を検討します。

借金よりプラスの財産が多ければ、相続や遺贈を受けて故人の遺産から借金を返済し残りを取得することも良いでしょう。

相続(受遺)したくない場合は、相続放棄を検討します。
包括受遺者は相続人ではありませんが、包括受遺を放棄するには、相続放棄が必要です。

相続放棄は、被相続人が亡くなった事実を知った時から3ヶ月以内にするのがベストですが、亡くなったことを知ってから3ヶ月以上経過していても、借金の存在を知らなかった等の事情があれば認められる可能性があるので、司法書士や弁護士にご相談下さい。

※不動産や預貯金等の財産を既に相続、受遺している場合は、相続放棄が認められることは難しいです。

消滅時効

もう一つは、「消滅時効」です。

督促している借金で、すに時効が完成している場合も少なくありません。

金融業者によっては、時効が完成しても督促状を送付したり、中には裁判を起こす場合もあります。

これは、時効の完成要件に関係しています。

民法上の時効は、時間が経過するだけでは確定しません。
時効期間が経過し、債務者が債権者に「時効を援用(主張)」して時効の完成が確定します。

よって、時効が援用される前であれば、返済請求してくるケースも多いです。

時効が完成しているのに安易に債権者に連絡を取ると、知らない間に承認行為(借金の存在を認める行為)に誘導されことがあります。

承認行為をすると「時効の援用」が認められなくなってしまうのでご注意下さい。

基本的に金融業者からの借入の時効は「5年」です。

慎重に5年の時効が完成している調査し、完成していれば「時効の援用」を行うことで、返済義務から免れることができます。
※「時効の援用」は記録が残る(簡易)書留等の方法で行いましょう。

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