自己破産したら、手元にある財産は全て返済にあてられ、丸裸になる。
と、思われている方もおられますが、そうではありません。
自己破産後も生活は続くので、ある程度の財産を手元に残しておくことが認められています。
裁判所で手続を経て自己破産が確定すれば、銀行や消費者金融、カード会社等からの借金は消滅しますが、単に借金がチャラ(消滅)になるのではなく、申立人に金銭等の財産があれば、手続の過程でそれらを返済に充てることを求められます。
財産があるのにそれを保持したまま、自己破産で借金をチャラにされると債権者は納得できないでしょうし、モラル的にも問題があると言えます。
かと言って、申立人は自己破産後も生活があるので、財産ゼロになっては生活再建もうまくいきません。
そこで、自己破産者の生活、債権者の権利を調整するために、法律は自己破産した場合でも破産者が保持できる財産を細かく規定しています。
この保持できる財産を「自由財産」と言います。
自由財産に関する規定は全国どこも大体同様なのですが、各地方裁判所によって若干異なる運用をしているケースのあるので、ここでは福岡地裁での取扱いをベースにご説明します。
保持できる財産
破産時も保持したままにできる財産を「自由財産」と言います。
自由財産(破産財団に属しない財産)は、以下の通りです。
民事執行法に規定する額x3/2を乗じた額の金銭
具体的には、66万円(規定額)x3/2で、99万円になります。
自己破産後も、現金99万円までは保持できることになっています。
但し、99万円は現金だけの限度額ではなく、保持できる財産合計の限度額ということにご注意下さい。
差し押さえが禁止されている財産
強制執行の際、差押えが禁止されているものがありますが、自己破産においてもこれが適用され、手元に残すことができます。
差押えが禁止されている財産は以下になります(主なもの)。
- 債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具等
- 給料(※1)・退職金(※2)
- 技術者、職人、労務者が業務に必要な器具(商品を除く。)
※1.給料の4分の3は差押えが禁止されているので、申立時に確定していて未受領の給料について4分の3を保持できます。
申立て後に支給される給料は、全額受領できます。
※2.退職金は状況によって異なります。
既に全額支払われている場合は、退職金ではなく金銭等の財産として扱われるます。
退職が決まっているが退職金を受け取っていない場合は、その4分の3を保持できます。
退職しない場合は、退職金予定額の8分の1を納付することになります。
保持できる財産の拡張
上記が自己破産時に保持できる財産ですが、別途、申立をすれば、現金や差押禁止財産以外の財産も保持することが認められることになります。
この申立を「自由財産の拡張」と言いますが、福岡地裁では以下の財産について拡張の申立をすることなく認められる扱いなっています。
- 預貯金・定期預金(20万円以下)
全口座の合計が20万円以下であり、超えると全額没収となります。 - 保険の解約返戻金(20万円以下)
- 自動車(時価20万円以下)
登録から5年を経過している場合は、保持できます(外国車やハイブリッド車等は除く)。 - 敷金
- 退職金(見込み額の8分の7相当額)等々
※ただし、保持できる財産は、拡張分も含めて総額「99万円」が限度ですので、ご注意ください。