奨学金の債務整理で知っておくべき4つのポイント

奨学金返済でお困りの方必見。奨学金と債務整理、自己破産の関係を司法書士が解説します。

奨学金

大学、短大進学者の2人の1人が奨学金を利用していると言われています。

  • 就活に失敗して非正規社員になり、給料は生活費だけで一杯一杯です。
  • リストラ、会社の倒産で職を失い消費者金融から借入し、以降、返済に追われる日々に。

多くの方が様々な理由で奨学金返済に苦しんでおられます。ここ数年、雇用環境の改善(と言っても非正規雇用が主流ですが)により、奨学金延滞額は減少傾向にありましたが、コロナ禍以降、リストラ、雇止めの急増で奨学金延滞が増えてくると予想されます。

奨学金の金利は消費者金融に比べてかなり低利(又は無利子)で月々の返済額は高額ではありませんが、元本が大きく返済期間が長いことが、じわりじわりと負担が重くのしかかってきます。

長い返済期間の中で、リストラや病気、生活費不足等の想定外の支出のために消費者金融から借入し、以後返済に追われ奨学金の返済もできなくなり破綻してしまうケースが多くなっています。

債務整理手続をする上で知っておくべきポイントがあります。司法書士がいろいろな角度から奨学金の債務整理を解説します。

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奨学金を滞納したらどうなる?

奨学金1

「日本学生支援機構」という名称から、消費者金融とは異なり公的な印象を持っている方がいらっしゃいます。

その印象や奨学金という性質から、少しくらい滞納しても大丈夫だろう、、、と思われかもしれませんが、その油断は禁物です。

文科大臣指定の独立行政法人なので民間企業ではありませんが、滞納への対応方法は消費者金融と大差ありません。

日本学生支援機構は、滞納した場合、本人及び保証人に文書と電話で支払の督促を行うとホームページではっきり表明してます。

督促は1回目の滞納からあります。学生支援機構は債権回収を民間に委託しています。HP上、機構職員による督促に加えて債権回収会社からも督促することがあるとしています(平日、休日の9:00~21:00の間に電話督促)。また、債権回収会社による督促は、電話、文書および自宅等への訪問により行うとしています。

以上のように、奨学金と言えどもその督促は、消費者金融の督促と変わりません。

滞納2回までのケース

滞納1回目で本人に督促がいきます。保証人にも連絡がいくかというと、多くはいかないようです。何回目から保証人に督促するとの基準はないようですが、概ね、2回連続滞納したら保証人にも通知がいくようです。

どうしても保証人に滞納を知られたくない場合は、滞納したらすぐに滞納した額の返済予定を機構に連絡して保証人へは通知しないようにお願してみましょう。

滞納で考慮しなければならないの滞納による延滞金です。

滞納が1回だけの場合、延滞金は発生しません。次回に2回分の振替をすれば問題ありません。うっかりミスがあるので、その点が考慮されているようです。2回滞納したら延滞金が発生します。

延滞金は無利息である第一種奨学金にもかかるので注意下さい。

延滞金の利率は種類と期間で異なります。

第一種奨学金は1.5~10%、第二種奨学金は3~10%です。いずれも平成26年3月28日以降は5%、令和2年3月28日以降は3%になっています。

滞納3回、3ヶ月以上のケース

月1返済を3回、または返済日から3ヶ月以上滞納した場合、いわゆるブラックリストにのります。

日本学生支援機構は全国銀行個人信用情報センターに加盟しているので、3か月以上延滞した場合は信用情報機関へ事故登録されることになります。この点は消費者金融と全く同じです。

ブラックリストにのってしまうといろいろ制約されてしまいますが、その制約は今以上に借金が膨らまないようにするための制約です。

制約されること

  • 新たな借入ができなくなる。
  • クレジットカードが使えなくなる。
  • 住宅・車のローンが組めなくなる。
  • 携帯電話機種代の分割支払いができない。
  • 入居審査に影響する場合がある等々。

ご覧のように制約はお金を使う場面の話しなので、基本的に自身の収入で生活が成り立っていればすぐに支障がでるということはありません。

長期滞納に対する学生支援機構の対応

日本学生支援機構は「奨学金事業への理解を深めていただくために」とする資料で、延滞に対する対応を以下のように行う旨表明しています(平成31年2月版)

■滞納~3ヶ月: 文書、電話による督促 
■滞納3ヶ月~: 民間債権回収会社に取立の業務委託
文書、電話、訪問 
■滞納9ヶ月~: 支払督促申立の予告開始 

機構による差押え手続きの流れ

9ヶ月後から行われる支払督促申立の予告が強制執行(差押え)に向けての手続き着手となります。

手続き1
督促しても返還されない場合、返還期限が到来していない分を含め、利息および延滞金の一括返還の支払督促申立を予告する。

※支払督促とは、機構が「裁判所」を介して奨学金の返済を督促する方法です。この後の仮執行宣言付支払督促が行われると、裁判なしで給料等を差押えることができます。
手続き2
支払督促予告で支払いを求めた返還期限を過ぎてもなお返還しない場合は、裁判所に支払督促の申立をする。返還未済額の全部、利息および延滞金の一括返還を請求し、支払督促の申立をする。
手続き3
支払督促の申立をしてもなお返還しない場合は、裁判所に仮執行宣言付支払督促の申立をする。

※支払督促申立後2週間以内に裁判所に異議申立をすれば、仮執行宣言は付されません。この場合、裁判に移行することになります。
手続き4
仮執行宣言付支払督促の申立をしてもなお返還しない場合は、強制執行の手続をとる。

※強制執行とは、給料や不動産等を差押えて、債権を回収することです。

奨学金の債務整理で知っておくべき4つのポイント

4つのポイント

奨学金も消費者金融からの借金と同様に債務整理をすることができます。ただし、奨学金という性質上、他の借金の債務整理とは異なるポイントがあるので注意が必要です。

ポイント1 任意整理

債権者に任意整理手続きの申し出を受ける義務はありません。あくまでも任意です。多くの消費者金融は対応してくれるのですが、日本学生支援機構はまず、受け入れないと言ってよいでしょう。

また、任意整理の目的は将来利息の削減なので、もともと利息が低い奨学金を任意整理しても、その効果は大きくありません。

これらにより、奨学金自体は任意整理に向かないと言えます。

では、任意整理手続きは使えないかと言うと、そうではありません!

他の債務整理と異なり、任意整理は対象とする借金を選択できます。そこで、「奨学金以外の借金」を任意整理します。これにより返済額を減額でき、その分を奨学金返済に回して完済を目指します。

この方法の一番のメリットは、保証人に迷惑をかけずに済むということです。親族である保証人に迷惑かけたくない、困窮を知られたくないという方にとっては、この方法が最適です。

重要なのは、「早期の段階」で手続きすることです。借金が膨れ上がってからでは、将来利息の削減という任意整理では対応できなくなってしまいます。

ポイント2 個人再生

自己破産という言葉のイメージから、自己破産だけはしたくないと思われている方も多いです。このような方には、個人再生で奨学金を処理することが最適です。

苦境に陥った大企業が裁判所に民事再生を申請した、とのニュースを見られた方もおられると思いますが、個人バージョンがこの個人再生手続きです。

個人再生手続きが裁判所に認められれば、基本的に借金は5分の1(最低100万円、最大10分の1)まで大きく減額されます。減額された借金を3~5年かけて月額均等で返済してくことになります。

毎月の返済額は劇的に減額され、生活も大きく改善されることになります。

個人再生のメリットは絶大ですが、奨学金ならではのデメリットもあります。

保証人、連帯保証人がいる場合、この方たちが残額を一括請求されることになります。

最悪の場合、保証人の方たちにも債務整理手続きが必要になってしまいます。

この請求は阻止することはできません。ただし、保証人と機構との話し合いで、一括ではなく分割返済が認められる場合もあります。

ポイント3 自己破産

学生支援機構が発表している奨学金返還者における自己破産率は0.05%(平成28年度)です。低い数字に見えますが、母数が大きいので、件数で言えば2,009件。毎日5.5人が奨学金の返済ができず自己破産していることになります。

奨学金という公的イメージから自己破産しても奨学金は返済しなければ、と思われている方もいらっしゃいますが、奨学金も自己破産で返済義務が免責されます。返済する必要ありません。

手続きも消費者金融からの借金を自己破産するのと変わりません。

自己破産は生活再建のための最終手段です。返済に行き詰り、どうにもならない状態であれば、ちゅうちょすることなく自己破産手続きを選択下さい。

ただし、自己破産も個人再と同様に、保証人、連帯保証人が一括請求されるというデメリットがあります。

自己破産や個人再生手続きする場合、伝えにくいとは思いますが、事前に保証人へその旨、連絡しておく方が良いでしょう。

ポイント4 保証人の存在

奨学金を借りる場合、人的保証と機関保証の2つのうちのいずれかを選択できます。約51%が人的保証を選択しています。

債務整理をする上で問題になるのが人的保証のケースです。この先、奨学金を借りる方で保証人に迷惑かけたくないと思われる方は、保証料がかかりますが機関保証をご検討下さい。

人的保証では、原則、親が連帯保証人、4親等内親族が保証人となります。

任意整理では、奨学金を整理の対象から外すことで保証人への請求を回避することができますが、個人再生、自己破産では回避できません。先に述べたように一括請求されることになります。

返済できなければ保証人にも自己破産等の債務整理が必要になってしまいます。

ここで、重要なことは、同じ保証人ですが、「連帯保証人」と「保証人」は違うということです。

「連帯保証人」は奨学金返還者と同じとお考え下さい。例えば、連帯保証人が2人いても3人いても、各自に全額返還義務があります。自分1人が全額請求されても文句が言えません。

対して、保証人の責任は、保証人の頭数の割合に分割されます。これを「分別の利益」といいます。
例えば、500万円の借金に連帯保証人1人、保証人1人の場合、連帯保証人は500万円の返済義務がありますが、保証人の返済義務は、500万円÷2(保証人の数)の250万円になります。

う~ん、何だか専門的で難しいからいいか・・・と思わないで下さい。あなたが保証人であったら思わぬ負担を背負わされることになります。

過去、日本学生支援機構は「分別の利益」による責任範囲を説明せずに、「保証人」に全額請求していたことが発覚し社会問題となりました。機構の見解は、保証人から「分別の利益」に基づく支払いしかしない言われたときは、その額を請求にしていた・・・だそうです。
「保証人」であるときは、しっかり保証人の頭数で割った分しか払わない!と主張して下さい。

奨学金破綻する前にやるべき事

平成29年度資料によると、奨学金を延滞している人の割合は3.7%に過ぎません。

一見少ないように見えますが、奨学金返還者の総数は約426万人もいますので、延滞している方は実に15万7,000人にも及びます。

機構によると、平成28年に奨学金返還者の0.05%、2,009件が自己破産となったが、うち31%は延滞もない、いきなりの自己破産であったとのことです。

債務整理、自己破産に追い込まれる前に、やること、やれることはいろいろあります。

保証人に知られないための債務整理着手

奨学金も借金であり、その保証人も消費者からの借入の保証人と変わりありません。
返済を滞納すれば保証人に連絡がいき、奨学金を債務整理すれば保証人は一括返済を請求されます。
保証人に知られたくない、迷惑をかけたくない・・という方は、返済が苦しくなったら早急に債務整理に着手して下さい。

このとき、奨学金を除外した任意整理を行います。

特定の債権を整理対象から除外できるのは任意整理だけです。
任意整理により他の返済額を小さくして浮かした分を奨学金返済にあてることで、保証人には知られず、また迷惑をかけずにすむことができます。
任意整理の成否はいかに早く着手するかによります。任意整理での減額率は大きくありません。返済額が大きく膨れあがった状態で任意整理を行っても、整理後の借金と奨学金の返済にあてる金額の確保は難しいです。

各種奨学金返済支援制度の活用

奨学金の返済には、各種の返済支援制度があります。日本学生支援機構をはじめ、自治体、会社、学校にも制度が設けられている場合があります。

まず、ご自分が住んでいる自治体や勤めている会社、通っている学校に支援、助成制度がないか確認してください。

日本学生支援機構の救済制度
・減額返還制度
・返還期限猶予制度
・死亡・心身障害による返還免除制度

減額返還制度は、返済額を2分の1や3分の1に減額して返済を継続していく方法です。減額した分、返済期間は長くなりますが、利息の支払額は当初と変わりないのがメリットです。平成29年の数字ですが、2万8,000件も利用されています。積極的な活用を検討して下さい。

返還期限猶予制度は、その名の通り、一定期間、返還を猶予してもらう制度です。期間は最大10年です(生活保護受給中など一部年数制限ないケースあり)。猶予期間中は利子が発生しません。平成29年の利用件数は、15万5,000件にのぼります。

経済的問題で上記2つの制度の利用する場合、所得制限があります。給与所得者は300万円以下、以外は200万円以下とされています。扶養者がいる場合は1人につき38万円控除されます。

死亡・心身障害による返還免除制度は、本人が死亡し返還ができなくなったときや精神若しくは身体の障害により労働能力を喪失、又は労働能力に高度の制限を有し、返還ができなくなったとき、願出により返還未済額の全部又は一部の返還を免除することができる制度です。いくつかの要件がありますが、積極的に機構に相談して下さい。

また、地方公共団体や企業によっては、奨学金返還支援を行っていますので、利用可能か一度検討下さい。

例 福岡市は市内で保育士として働いている方に月額1.5万円(大卒)、1万円(短大・専門学校卒)の補助をしています。

利用できるものは全て利用して、返済額軽減を図って下さい。