ブラックリスト

債務整理と言えば、「任意整理」「個人再生」「自己破産」「特定調停」があげられます。
自分だけでやるのであれば、「特定調停」が最適です。
裁判所が絡むのはイヤ、いくつもの書類を集め作成するのはイヤといういう方は「任意整理」になるでしょう。

残る「個人再生」と「自己破産」はいずれも裁判所がガッツリ絡んできます。
集める資料、作成する書類も簡単ではありません。

借金額が大きくて「任意整理」や「特定調停」してもとても返済できないような場合、残る選択肢はこの2つ整理方法になります。

どちらの方法で債務整理するか?
お悩みになる方も多いでしょう。
借金返済が一切必要なくなる「自己破産」は、毎月の返済で苦しまれている方にとって最大の魅力ですが、「自己破産」という言葉のイメージで躊躇される方も少なくありません。

この2つの債務整理方法についてそれぞれの特徴をご説明しますので、どちらを選択するか検討する際のご参考にして下さい。

個人再生の選択理由

個人再生では、基本的に借金は5分の1(最低100万円)に減額され、それを3年(最大5年)かけて月額均等払いで返済していきます。

手続き後に返済していけるか

まず、個人再生した場合の返済予想額を計算しましょう。
借金総額が1,500万円未満であれば、5分の1(最低100万円)に減額されます。
現在の借金総額を5で割って、更に36で割って下さい。
その額が、個人再生後に月々返済していく返済額になります。

例えば、各社からの借金の総額が500万円であれば、
500÷5÷36=2.78 月々の返済額は約2万8千円になります。
多くの方は、今の返済額から激減すると思います。

計算した返済予想額と現状の手取りの収入額をみて、3年間継続して返済できそうか(場合によっては5年返済が認められることもあります)じっくり検討して下さい。

※あくまでも単純計算による予想額です。個人再生には手続き後の借金総額を決める上で他にも基準(清算価値基準等)があり、5分の1の額より大きくなる場合があるのでご注意下さい。

計算した金額での返済が難しい場合は、自己破産を選択することになるでしょう。

ローン返済中の家を保持したい

ローン返済中の家があり保持したまま債務整理をしたい場合は、個人再生を選択することになります。
自己破産では原則、家を保持することはできません。

ただし、個人再生で家を保持する場合、「住宅資金特別条項」という制度を利用しなければいけませんが、利用するにはいろいろな条件があるので、必ず利用できるというものではありません。
住宅資金特別条項の詳細はこちら

借金の原因が自己破産不許可事由に該当する

個人再生では、借金の原因は一切問われません。
対して、自己破産には法律で自己破産手続きが不許可になる事由が規定されています。
借金の原因がこの不許可事由に該当する場合、安全を期して個人再生を選択することも考えられます。
ただし、よほどの事でない限り不許可事由に該当するからといって自己破産が裁判所で否定されることはありません。

手続き中に制約されたくない

自己破産には手続き中に職業が制限されることがあります。
自己破産Q&Aの「自己破産すると仕事に影響しますか?」を参照下さい。

また、破産手続きが管財事件になると、一時的に引っ越しや旅行が制限され、郵便物は管財人に全部転送されることになります。

これらの制限がイヤな場合は、個人再生を選択することになります。

自己破産の選択理由

自己破産は、とにかく1円も返済する必要がなくなる、、につきます。
※税金等一部返済が必要なものもあるのでご注意下さい。

自己破産が裁判所に認められることを前提に言うと、ご相談者が自己破産手続きを司法書士や弁護士に正式に依頼した瞬間から返済する必要がなくなります。
※手続き費用及び報酬の支払いは必要ですのでご留意下さい。

資格者が自己破産手続きを受任すると、依頼人には全ての返済をストップしていただき、同時に裁判所にて手続きを進めていくことになります。

返済からの解放

毎月悩まされていた返済から解放されます。
これだけも自己破産を選択する理由に十分でしょう。
まさしく、生活再建に向けて新しい人生をスタートすることができます。

手続きにかかる費用

状況や事務所にもよりますが、概ね、裁判所に支払う費用及び司法書士や弁護士に支払う報酬を合わせた総額は、個人再生より自己破産の方が安く済む傾向にあります。

裁判所に支払う費用は一括での支払いになりますが、司法書士や弁護士報酬は分割支払いに応じている事務所もあります。
依頼した時点で業者への返済はストップするので、今まで返済していた分から生活に影響ない程度で分割で支払っていくことになります。

※手続き報酬は、事務所によって異なるので必ず自己破産の方が安いとは言えません。
必ず事前に費用を確認して下さい。

借金額が大きいか100万円前後かそれ以下

借金額が非常に大きいと、個人再生しても月々の返済額は大きく3年間の返済には堪えられないでしょう。
また、個人再生の場合、減額の最低額は100万円です。
ですので、100万円前後や100万円以下の借金を個人再生する意味はありません。
この場合は自己破産を選択することになるでしょう。

職に就いてなく無収入・生活保護の状態

無収入であれば、個人再生を選択することはできません。
個人再生は手続きによって減額された借金を返済することが前提ですので、収入が無い場合は返済できないとして個人再生は認められません。

また、基本的に生活保護受給費は借金返済に充当することはできません。

これらの場合は、自己破産を選択することになります。

大口債権者が個人再生手続きに反対している

個人再生をする際、2種類の手続きがあり通常「小規模個人再生」手続きを選択します。
ただし、この手続きの過程で債権者数の2分の1、債権額の2分の1の債権者から反対されると小規模個人再生での手続きができなくなります。

この場合、債権者の賛否不要なもう一つの「給与所得者等再生」手続きを検討することになりますが、この手続きには特有の減額基準方法(法定可処分所得基準)があり、5分の1より大きな借金が残ってしまうおそれがあります。
残った借金を分割で返済できそうにない場合は、自己破産を選択することになります。

まとめ

個人再生と自己破産の2つの債務整理方法には、手続上大きな違いはありません。
費用面で違いはありますが、手間に関してはさほどかわりません。

また、手続きをした上での影響もほぼ同じです。
ブラックリストに載ることになりますし(以後、5,6年はクレジットカード作成やローンを組むことができなくなります)、官報への掲載等もほぼ同じです。

私個人としては、個人再生、自己破産どちらを選択するか、、とすると、自己破産が良いのではと思います。
個人再生で借金は大きく減額されますが、それでも以後3年間毎月最低でも3万円近い返済をしなくてはいけません。
3年の間にリストラ、派遣切り、入院等々何か不測の事態が発生し返済できなくなると、自己破産しなければいけなくなります。

そうなると払った個人再生手続き費用は無駄になり、新たに自己破産の手続き費用を払わなくてはいけなくなります。
3年間、このような状態になるおそれを抱きながら生活をしていくより、自己破産することで返済自体から解放され、新たな人生を再スタートされた方が良いのではと思います。

しかし、人それぞれに想い、生き方があるので、自己破産だけはしたくない、、と思われることも十分理解できます。
ご相談をお受けする場合、その方の生活状況、収入状況等々を考慮しながら、ご希望にそった最適な債務整理方法をご一緒に考えていきたいと思っております。