裁判所

「債務名義」という言葉を一般の方が聞くことはありません。

日常会話上の言葉ではなく、法律用語です。

対して、「差押え」「強制執行」という言葉は、一般の方でもご存知の方も多いと思いますが、「債務名義」と「差押え」や「強制執行」は、密接に関係しています。

債務名義

民事執行法第22条に、以下のような規定があります。

強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という)により行う。

  1. 確定判決
  2. 仮執行の宣言を付した判決
  3. 抗告によらなければ不服を申し立てることができない裁判(確定しなければその効力を生じない裁判にあつては、確定したものに限る。)
  4. 仮執行の宣言を付した支払督促
    訴訟費用若しくは和解の費用の負担の額を定める裁判所書記官の処分又はに規定する執行費用及び返還すべき金銭の額を定める裁判所書記官の処分(後者の処分にあつては、確定したものに限る。)
  5. 金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)
  6. 確定した執行判決のある外国裁判所の判決
    確定した執行決定のある仲裁判断
  7. 確定判決と同一の効力を有するもの(第三号に掲げる裁判を除く。)

上記7項目を「債務名義」といい、強制執行をする場合、事前に7項目のうちどれかを取得しておく必要があります。

※不動産に(根)抵当権が設定されている場合、上記債務名義は不要で強制執行が可能です。

強制執行

強制執行とは、言葉の通り強制的に何かを執行すること意味し、何かを「差押える」ような行為になります。

強制執行は以下の3種類あります。

  1. 不動産執行
    不動産(家、土地等)の差押え
  2. 動産執行
    宝石や高級家具等の動産の差押え
  3. 債権執行
    給料、銀行預金等の差押え

金融機関や個人等(債権者)からお金を借りて、返済できなくなった場合に、債権者が裁判所を通じて強制執行を行い、換金等して貸金を回収します。

強制執行をするには

お金を貸しているが返済してくれない、長期間滞納したら、すぐに財産を「差押え」「強制執行」をする、差押えられるか、というとそうではありません。

まず、債権者は、先に述べた民事執行法22条に掲げられている7項目の「債務名義」の内どれかを取得しなければいけません。

裁判を起こして仮執行宣言を付した判決を得るか、簡易裁判所を通じて仮執行の宣言を付した支払督促手続きをすることが一般的です。

※相手の同意を得て、お金を貸す際に公証役場で「執行証書」を作成しておけば、いきなり差押えの手続をすることができます。

また、債務名義をもって裁判所に強制執行の申立をする際、当該債務名義が有効であるとする「執行文」を事件が記録されている裁判所(書記官)から付与してもらう必要があります(少額訴訟や支払督促は不要)。

まとめ

返済に不能で差押えられる、差押えが必要なる、このような場合、その前に裁判が必要なこともあれば、執行証書のように裁判なしで強制執行ができるケースもあります。

また、強制執行の際に執行文の付与が必要なケースもあります。

裁判等の要否は、債務名義の種類によって異なります。

債権者、債務者の立場でそれぞれ強制執行の可能性を考慮し、事前に対応策を検討しておく必要がります。