おまとめローンはお得ですか?
複数社から借りている借金の総額に相当するお金を特定の金融機関から借りて他社からの借入をまとめて返済し、以後、その特定の金融機関に返済していくことをおまとめローンと言います。
消費者金融に比べて銀行のおまとめローンは金利が低いかわりに審査がきびしかったり、消費者金融によっては、銀行カードローンを適用外としていたりしている場合があるようです。
また、古くから借りている借金で過払い金が発生していたとしても、おまとめローンで清算してしまうと、過払い金を請求する機会を失うおそれもあります。
おまとめローンで借金を一本化すれば管理もしやすく、金利も現状より低くできればお得で便利なローンと言えますが、安易に利用することでかえって負担増になることもあるので注意が必要です。
ポイント1 返済総額がかえって増える?
おまとめローンをする際、返済計画を立てます。
もともと返済がきつくておまとめローンに切り替える方が多いので、できるだけ毎月の返済額を抑えようとされるでしょう。
しかし、返済を楽にするために毎月の返済額を少なくすると、その分返済期間が延び、その間利息も払い続けることになります。
おまとめローンで金利は低くなったのに、長期間利息を払い続けることで返済総額が前より大きくなった、というケースも起こり得ます。
月々の返済額と利息総額は反比例します。
返済額を下げればその分支払う期間が長くなり、利息の総額は増えます。
金利が低い! 月々の返済額が少ない!
この言葉にひかれておまとめローンに飛びつく前に、しっかり返済総額を確認しください。
規制の対象外に
通常、消費者金融業者等の債務者への貸付は、年収の3分の1以内とする規制があります。
無理な貸付による債務者の生活破綻を防止しようとする規制ですが、借換えで金利が安くなる等の一定の要件を満たした場合、おまとめローンは規制の対象外となります。
つまり、3分の1を超えて借りることができます。
多く借りれるようになるので助かる、とも捉えられますが、年収の3分の1を超える借金は、多少金利が安くなっても負担は重く、将来、破綻をまねく原因になりかねません。
ポイント2 ほんとに金利が低い?
おまとめローンの言葉の通り、この商品は多重債務者向けです。
複数社から借入している人がターゲットです。
金融機関から見れば、滞納リスクが高いと言えます。
リスクが高いということは金利が高くなる傾向にあります。
例えば、5社から借りているとして、全部の借入に対しておまとめローンの金利の方が低いですか?
おまとめローンの方が高いのは5社のうち1社だけだから・・と思っておられる方、その1社からの借入額はいくらですか?
特に、銀行系からの借入を消費者金融系のおまとめローンに借り換えする場合は、金利が高くなりがちなので、しっかり確認してください。
ポイント3 利息に利息がつく
現在の借入残高は、A社に40万円、B社50万円、C社に30万円の計120万円。
これをD社からおまとめローンで120万円借りてA、B、C社に全額返済し、後はD社に120万円の元本とその利息を支払っていく。
どこがおかしい??
おかしいんです。
A、B、C社への残金120万円は、全額元本ですか?
利息や遅延損害金が含まれていませんか?
利息がいくら含まれているかは、利率や滞納状況によって違ってきます。
例えば、3社の借金の「元金」合計が100万円、「利息」が20万円とした場合、利息はこの先も発生しますが、 「元金」の100万円に対してだけです。
しかし、D社からおまとめローンとして120万円を借り入れたら、「元金」は120万円になり、この先120万円に対して利息を払っていくことになります。
滞納なく返済していれば問題ありませんが、滞納している場合はおまとめローンで「利息に利息が付く」ことになってしまいます。
ポイント4 担保・保証人
おまとめローンの中には、担保や保証人を求められる場合があります。
持ち家を担保にいれたり、頼みこんで親族に保証人になってもらったりすることで、のちのちトラブルの原因になることがあります。
順調に返済できれば何の問題もありませんが、滞納し返済できなくなり債務整理が必要になった場合に困ったことになります。
持ち家を担保にしていれば(家に根・抵当権を設定する)、債権者にとって家を差押えて競売処分するハードルは低くくなります。
担保がなければ債権者は差押えの前段階として、貸金返還訴訟を起こして仮執行宣言付判決をとるか、勝訴判決を確定させる、または、裁判所を介して、支払督促、次いで仮執行宣言付支払督促をする必要があります。
これらの手続きを行うには時間も費用もかかりますが、抵当権を設定していればいきなり差押えが可能になります。
安易な家への抵当権設定に注意
住宅ローン以外の抵当権を家に設定するときは、慎重に検討してください。
その行為は、返済に困ったとき、家を保持したままできる債務整理の選択肢を失う結果になります。
借金が5分の1(最大10分の1)に減額できる個人再生という債務整理手続きがありますが、この手続きで住宅資金特別条項が適用できれば、住宅ローン返済中の家を保持したまま債務整理ができます。
しかし、家に住宅ローン以外の根・抵当権が設定されていると、この条項は適用されません。
おまとめローンで家に根・抵当権を設定してしまうと、この制度を使って家を保持したまま債務整理することができなくなります。
保証人をつければ、将来返済に困り滞納したとき、当然ですが、保証人が返済を求められることになります。
保証人がいなければ、自分自身の問題で済み、自分の借金に周囲を巻き込まずに済みます。
担保や保証人を求められるおまとめローンを利用する場合は、上記のリスクを慎重に検討してください。
家を差押えられた!
保証人に請求がいった・・では、対応できる手段は限られてしまいます。
問題の先送りではないか? この先返済を継続できるか? をしっかり検討し、状況によっては、おまとめローンではなく債務整理をすべき場合もあります。
ポイント5 新たな借入ができない
おまとめとローンは返済専用のための借り換えです。
通常、このローンでは借入をすることはできません。
消費者ローンでは返済と新たな借入を繰り返すことができますが、おまとめローンではできません。
※おまとめローンの借入先からは新たな借入はできませんが、他社からの借入は可能です。
おまとめローンが多重債務のきっかけに
おまとめローンで複数社からの借入合計額に相当する金額を借入し、そのお金で他社に全額返済します。
他の金融機関にとっては借金を完済してくれた優良顧客になり、当然、再度借入してもらいたくて、ダイレクトメール等の勧誘行為が行われるでしょう。
つまり、他社からはお金が借りやすい状況になります。
清算により借入枠が増えているので、油断するといろいろな所から新たに借り入れてしまい、結果、おまとめ前よりも多額の借金を背負う多重債務者になってしまうおそれもあります。
おまとめローンを検討するにあたって
以上のように、おまとめローンには注意しなければいけないポイントがありますが、おまとめローンには多くのメリットもあります。
良い点、悪い点を検討し、ご自分にあっているかどうか見極めた上で、ご利用ください。
3社、4社と各社と異なる返済日にATMまで行って返済手続きをするのは、とても面倒な事です。
忘れることもあり、返済が遅れればその分利息が付いてしまいます。
おまとめローンにすれば1社に対してだけの返済なので、返済の管理も簡単になります。
収入も安定していて返済も順調にされている方で、借入先が多く返済手続きが面倒で困っておられる方は注意点を考慮すれば、おまとめローンの活用も検討に値するでしょう。