通常、自分名義の家を保有している方が自己破産をすると、家は手放すことになります。
主だった財産は換金され借金の返済に回されるので、自宅も競売されることになります。
家を保持したまま債務整理したい場合は、任意整理か個人再生の住宅資金特別条項を使っての債務整理を検討することになります。
しかし、家の保持ではなく住み続けることに主眼を置くのであれば、自己破産+リースバックという方法をとることで可能になる場合があります。
今回は、自己破産におけるリースバックについて解説します。
リースバックとは
リースバックとは、家を売却すると同時に当該家を賃借することを言います。
現在住んでいる家を第三者に売却し(売却額は返済に回されます)、同時に買主を賃貸人、売主を賃借人として売却した家の賃貸借契約を締結し、売主は賃料を払うことで今の家に住み続けることができます。
家は売却するので所有者ではなくなりますが、従来通り住み続けられるので外形的には何ら変化はありません。
固定資産税の負担もなくなります。
また、契約内容によっては将来買戻しができるケースもあるので、収入が好転すれば再度所有権を取り戻すことも可能になります。
今までの生活環境を変えることなく自己破産後の再スタートができ、債務者にとっては良い方法ではありますが、債権者との関係でリースバックを行う事は簡単ではなく、以下の問題を解決しなければいけません。
問題点1.家のローン債権者(抵当権者)
家のローンが残っている場合、家にはまだ抵当権が設定されています。
リースバックとして売却するには、この抵当権を抹消しなくてはいけません。
ローンを完済してない抵当権を抹消するには、抵当権者の了承が必要です。
売却額でローン残額を支払うことができれば問題ないでしょうが、足りない場合は交渉して承諾してもらわなければいけません。
承諾してもらえなければリースバックはできなくなります。
問題点2.売却額の相当性
債務者が自己破産すると、債権者は自己の債権の全額回収ができなくなります。
全額返済できないから自己破産するのですが、債権者としては1円でも多く回収したいと希望するでしょう。
債務者の持ち家は最大の財産と言えるので、出来る限り高い価格で処分して売却代金から債権を回収しようとするので、債権者にとって家の売却額は最大関心事項です。
リースバックで売却した場合の売却額はどうなるか。
リースバックの買い手は購入して自分の所有物になっているのに売り手に賃貸しなければならず、自由に処分することができません。用途が制限された条件で購入することになります。
このような状況での売買価格は、用途制限のない売買より低くなってしまう傾向にあります。
相場より低いと判断されたら、少しでも高く売って債権を回収したい債権者から反対されるおそれがあります。
最悪のケースとしては、債権者から詐害行為として売買を取消すよう訴訟を起こされるおそれもあります(自身が住み続けるために故意に低い価格で売却し、その分債権者に損害を与えた)。
※リースバックでの売却額は、売却後の賃料が大きく影響します。
賃料を低くしようとすれば売却額も低くなってしまいます。
高くすれば賃料の負担が大きくなり自己破産後の生活に支障が出てしまうので注意が必要です。
問題点3.破産管財人
自己破産手続きは破産管財人の指示、許可を受けながら行われます。
持家をリースバックするには破産管財人の許可を受けなければいけませんが、承諾を得るのは簡単ではありません。
破産管財人は債務者のためだけに職務を行うものではありません。
破産手続きにあたって破産者の財産を処分して債権者に適切に返済する義務も負っています。
破産者が家に住み続けるために相場より安価で売却すると、その分債権者の回収額が少なくなってしまうので、不当に不利な価格と判断されたらリースバックは許可されないでしょう。
通常、自己破産手続きは弁護士や司法書士に委任されているでしょうから、破産者、受任者、破産管財人とで協議しながらリースバックを行う事になります。
まとめ
リースバックという売買契約は現在の家に住み続けながら、まとまった資金を調達する場合にとても便利です。
会社が新事業への展開、財務改善等の目的のために自社ビルを売却して大きな資金を得、売却後は賃料を支払って引き続き同じビルで事業活動するというような場合に利用されます。
個人も同様に、自宅売却により得た資金を借金の返済に充て、以後賃料を払って売った家に住み続けるためにリースバックを利用することがあります。
しかし、上記で説明したように自己破産状態でのリースバックはいろいろな問題があり実現するのは簡単ではありません。
自己破産に至る前のできるだけ早い段階でリースバックを行えば、家に引き続き住み続けながら売却金で大きく債務状態を改善し、以後の返済もラクになります。
早期の着手がリースバック成功のポイントになります。