困窮

2020年から始まったコロナ禍で経済的に苦境に陥った方々に対して、緊急避難的に「緊急小口資金等の特例貸付(最大20万円の貸付)」が行われてきました。
また、「総合支援資金制度(最大60万円の貸付)」を利用して生活支援費や住宅入居費、一時生活再建費として借入されている方もおられます。

「総合支援資金」による借入は、長引くコロナ禍の影響で最大3回まで申請できたので、「総合支援資金」と「緊急小口資金等の特例貸付」をフルに利用すれば200万円まで借入ることができました。

これらの制度による借入に対する返済(償還)は猶予されていたので、当面返済の心配なく生活費等に使うことができたのですが、いよいよ、貸付の一部の返済猶予期間満了が迫ってきました。

返済開始時期

返済開始時期は、借入時期等によって異なります(下記表を参照下さい)。

借入方法・借入時期 返済開始時期
緊急小口資金
令和4年3月末までに申請
令和5年1月から
緊急小口資金
令和4年4月以降に申請
令和6年1月から
総合支援資金(初回貸付分)
令和4年3月末までに申請
令和5年1月から
総合支援資金(初回貸付分)
令和4年4月以降に申請
令和6年1月から
総合支援資金(延長貸付分) 令和6年1月から
総合支援資金(再貸付分) 令和7年1月から

上記の表のように、令和4年3月末までに借入申請した「緊急小口資金」「総合支援資金」に対して、来年である令和5年1月から返済が始まります。

返済開始までに2ヶ月程度しかありませんが、返済準備をしておくことが重要です。
借入時の書類を見てご自身の返済額を確認して下さい。

借入に対しては無利子か利子付総合支援資金もかなり低利子になっており消費者金融等に比べて返済負担は小さくなっています。
今の手取収入から生活費を差し引いた残りの額で返済できるかがポイントになります。
余裕を持って返済できる状態にある方は大丈夫ですが、返済額に足りない、収入がそのまま生活費として消えてしまう状態の方もおられるでしょう。

その場合、収入を上げるのは簡単ではないので、まず、生活費の支出内訳を見直しましょう。
抑えられる支出をしっかり抑えることができれば、返済に回す分を確保できるかもしれません。

それでも、どうしようもない場合はどうするか?
何もせずに、滞納するか?

方法はあります。

返済免除制度

国は返済が困難な方の救済策として、一定額の返済免除制度を設けています。
制度の適用を受けるには要件がありますが、要件を満たしていれば「緊急小口資金」で最大20万円「総合支援資金」で最大60万円(単身世帯は45万円)の返済が免除されます。

借入方法・借入時期 要件
緊急小口資金
令和4年3月末までに申請
令和3年度(又は4年度)が住民税非課税
緊急小口資金
令和4年4月以降に申請
令和5年度が住民税非課税
総合支援資金(初回貸付分)
令和4年3月末までに申請
令和3年度(又は4年度)が住民税非課税
総合支援資金(初回貸付分)
令和4年4月以降に申請
令和5年度が住民税非課税
総合支援資金(延長貸付分) 令和5年度が住民税非課税
総合支援資金(再貸付分) 令和6年度が住民税非課税

ご覧のように、適用されるのは住民税が非課税である方になります。
借受人と世帯主が住民税非課税(均等割・所得割いずれも1)であれば、他の世帯員が非課税でなくても適用対象となります。

また、上記以外でも、

  • 判定年度以降に借受人及び世帯主が住民税非課税になった。
  • 返済中に借り受け人が死亡・失踪宣告・精神福祉手帳1級または身体障碍者手帳1級又は2級の交付を受けた・自己破産等で返済が困難になった。

このような場合でも、返済の全額又は一部が免除になります。

※1:福岡市のケースで「均等割・所得割」ともに非課税となる場合は、①生活保護法による生活扶助を受けている方、②障がい者、未成年者、寡婦(夫)、ひとり親で前年中の合計所得が135万円以下の方、③前年中の合計所得金額が同一生計配偶者および扶養親族がいない方は所得が45万円以下、同一生計配偶者または扶養親族がある方は所得が(35万円×(同一生計配偶者+扶養親族数+本人)+21万円+10万円)以下の方になります

返済免除申請方法

返済免除を受けるには申請が必要です。
自動的に免除されるわけではありません。
適用対象になっているのに、免除申請しなければ通常通りに返済請求されることになります。

申請は社会福祉協議会から送付されてくる返済案内書類を確認下さい。
その中に返済免除の申請書が同封されています。
同封されていなかったら社会福祉協議会に問合せして入手して下さい。

申請には、申請書と住民税が非課税であることを証するものとして「非課税証明書」、及び世帯全員の住民票が必要です。
役所に行って発行してもらいます。
緊急小口資金と総合支援資金は別々に申請しなければいけない(まとめて一つの免除申請不可)ので、提出書類はそれぞれに必要になります。

申請書の記入欄に必要事項を記入し、返信用封筒に入れて社会福祉協議会に送ります。
問題なければ、協議会より免除された旨の通知がきます。

債務整理との関連

返済免除の要件に該当しない場合、通常通りの返済が開始されることになります。

滞納してしまうと無利子や低利子であった貸金に延滞金が発生してしまい、返済が更に苦しくなってしまいます。
返済が苦しいからと、消費者金融等から借りて返済するようなことは止めましょう。

無利子・低利子の貸金返済のために、より高い利子が設定されている金融業者から借りて払う行為は、ほんの一瞬だけラクになるかもしれませんが、確実に破綻に向かいます。
返済が苦しくなったら、社会福祉協議会や自立相談支援機関等に相談しましょう。
いろいろな相談に対応してくれます。

そして、「緊急小口資金」や「総合支援資金」であっても債務整理の対象となることを覚えておいてください。
最終的には、自己破産をして「緊急小口資金」や「総合支援資金」の返済を回避することも可能です。
債務整理に費用がかかりますが、法テラスを活用できれば安く抑えることができます(法テラスの詳細はこちらへ)。

以前と比べてコロナ禍の経済に対する影響は小さくなりつつありますが、依然として感染者も多く昔のような状態には戻ってはいません。
返済に困ったとしても救済策はありますので、躊躇せずに関係機関にご相談下さい。