保証人契約

既にいろいろな所から目一杯借りていてこれ以上借りれない状態になり、子供の名義を使って新たに借りる、債権者から保証人を求められ勝手に子供を保証人にする。

親が子を借金の道具にする・・・
残念ながら、このような親は存在します。
ローンで物を買おうとしたらローン契約を拒絶されことで、自分の名で数社からお金が借りられていて滞納状態にあることを知り、調べたら親が勝手にやっていた、、という事例もあります。

自分の知らない間に親の借金の保証人にさせられていたら?
親が返済を滞納し債権者から保証人として返済を求められて初めて自分が保証人になっていた事実を知ることになります。
連帯保証人への請求は全額一括返済なので驚きも大きいでしょう。

信じ難い話しですが、残念ながら現実にあります。
では、親がやったことだから仕方ないと諦めなければいけないのか?
全ては親が勝手にやったことで私は全く知らない、関係ないと返済を拒絶できるのか?
司法書士が分かり易く解説します。

保証人にされているか調べる

債権者から実際に保証人として請求されていない状況で、自分が保証人にさせられているかも、と思うことは普通はないでしょう。

しかし、何らかの理由で不安を感じる場合、債権者によりますが自分で調べることができます。
信用情報機関に登録されている自身の信用情報開示請求をすることで、保証人として登録されていればすぐ分かります。

2種類の信用情報機関(銀行系:全国銀行個人信用情報センター、クレジットカード・信販系:株式会社シーアイシー)で調査することができます。

但し、特に銀行などは保証契約する際の本人の意思確認等をしっかりするので、知らない間に保証人になっていたということはあまり考えられません。

保証人として突然返済を求められたら

保証人になる意思もなく、勝手に親に保証人にさせられていた場合、基本的に返済に応じる必要はありません。

無権代理行為に該当

親が子供の承諾なしに子の名前を使って保証人になる契約書に署名、捺印した場合、その行為は「無権代理」行為となります。
難しい法律用語ですが、簡単に言うと、親が勝手に権利もないのに子供の代理人となって子供が保証人となる契約をしたということになります。

この場合の権利とは、子供の委任(依頼)による代理権になります。
子供が「私に代わって保証人契約をして下さい。」と親に委任(依頼)すれば、子供の代りに保証人契約ができます。

しかし、親が子供の名で勝手にした保証人契約は、代理人の権限がない者がした行為「無権代理行為」となり、その行為は無効になります。
よって、子は保証人としての責任を負うことはありません・・・が、話しはそう簡単ではありません。

債権者の対応

債権者から見覚えのない借金の保証人として返済を請求されたら、「私は全く知らない、保証人になったことはありません。」と支払を拒否しましょう。

保証人契約書を提示され、親の借金の保証人として契約書に署名、捺印がされていると債権者は反論するでしょうが、「私が書いたものではありません、全く知りません。」と主張しましょう。
※知らないところで親が勝手に自分の名前を使って保証人にしているので、当然の主張です。債権者が少額でもいいからとうるさいので、取りあえず1,000円だけ払う・・ということは絶対やってはいけません。
1,000円を支払う事で、親が勝手にした保証人契約を子が認めた(追認)と捉えられ、保証人契約が有効になってしまうおそれがあります。

拒否することで債権者が引き下がってくれれば問題ありませんが、簡単には引き下ってくれないでしょう。
通常、銀行等はこのような状況になることを嫌い、かなり用心深く保証人の意思確認を行います(保証人当人であること及び保証人になる意思確認を行い、面前で署名、捺印をしてもらったりしています。)。

しかし、本人確認もせずに書類だけで保証人契約を結ぶ債権者も少なくありません。
そして、多くの債権者は保証人契約は有効だと主張し、保証人としての返済義務の履行を求めてきます。

最終的には、訴訟で決着をつける、、、ということになります。

争いのポイント

「無権代理行為」は基本的に無効と説明しました。
しかし、どんな状況でも無効というわけではありません。

相手にとって(この場合は債権者)、親が正式に子の代理人として保証人契約をしていると思っても仕方のない状況があったら、「表見代理」として契約が有効になってしまうことがあります。
表見代理とは、親の行為は無権代理ではあるが、本人(子供)に何らかの行為がありその行為により相手(債権者)が親の行為が正式な代理行為だと思っても仕方ないとされるような場合は有効になることを言います。

無権代理行為が表見代理と判断されるための3つの基準が規定されています。
「代理権授与表示による表見代理」、「権限外の行為の表見代理」、「代理権消滅後の表見代理」の3基準ですが、法律的内容になるのでここでは説明を省略します。

今回のテーマに則して検討すると、子が親に保証人契約のための代理権限を与えているかのような状況代理権授与表示による表見代理)があると、表見代理として保証人契約が有効となってしまいます。

では、代理権を与えているかのような状況とは何か。

債権者から突然保証人として返済を求められたとき、まず、保証契約書を確認して下さい。
保証人としての契約は書面ですることが法律で規定されています。
書面なしの口頭による約束は無効です。
必ず書面があるので、債権者から写しをもらって内容を確認して下さい。

契約内容も重要ですが、署名、印をしっかり確認して下さい。

署名は自分の字でしょうか?
意図を隠されて別の理由を言われて中身を見ずに自身で署名したということはないですか?
親の字に特徴が似ていませんか?

印は認印?、日頃自分が使っている認印?、自分の実印?
どれに該当するか確認して下さい。

中身を確認せずに自分で署名していた、実印が押されていた、というような場合は、厳しい状況になります。
自分で署名をしていることで保証人になる意思が認定されやすくなってしまいます。

裁判官にとって、保証人になるつもりで署名したが、いざ、請求される段になってそんなつもりはなかったと主張する人と区別することは困難です。
また、実印が押されていると、実印をしっかり管理していなかったことが問われることになります。
しっかり管理していなかった子供と、実印が押されていることでそれを信じて融資を実行した債権者のどちらを救済するか・・という判断になります。

ただし、同居の親だと簡単に子供の部屋に入って実印を使うことも予想できるので、債権者が実印の確認だけでなく保証人である子供に直接会うか電話するかして意思確認をしなかったことの落ち度を反論材料にすることも可能でしょう。

裁判になるような場合、弁護士や司法書士(140万円以下の保証契約限定)に代理人として依頼することができます。
ただし、実印が使用されていたり、印鑑証明書も提出されていたりするような厳しいケースの場合は、訴訟の専門家である弁護士に依頼される方が良いでしょう。