返済を滞納すると、金融会社等から督促の書面や電話がくることになりますが、それでも返済しないとどうなるか?
滞納が継続しているような場合、業者によっては訴え(貸金返還請求事件)を提起することがあります。
通常、訴えの内容は「元金、利息の一括返済、支払う日までの遅延損害金を払え」となります。滞納により分割返済の取決めは喪失(期限の利益の喪失)するので、一括での返済請求をされることになります。
滞納で訴えられた場合、まず、すべきことは訴えの内容に間違いないか(借りている事実、滞納している事実)を確認すると共に、時効が完成していないか、過払い金が発生していないかを調査します。
裁判所から訴状が送られてくると、「答弁書」という書類が同封されていますので、既に時効が完成している等の事実があれば、言い分としてその事実を書いて決められた期日までに裁判所に提出します。
これらを踏まえて、今回は、訴えられてらどのような対応をするかについてご説明します。
訴える理由
理由として、3つ考えられます。
一つは、返済を促す目的です。
滞納すれば、金融機関は督促状等を送付して返済を求めてきますが、それでも滞納を続ける場合、返済を求めて訴えを提起します。
訴えることで、債務者が慌てて返済する、司法書士や弁護士に依頼して債務整理をする、これらを期待して提起します。
二つ目は、時効の完成を阻止する目的です。
金融業者に関する貸金の時効は5年で完成します。
これを阻止するために、完成前に訴えを提起します。
勝訴判決を得たら、時効期間は確定の日から10年に伸長されます。
三っ目は、差押え目的です。
債務者の資産を差押えるには、事前に訴えを提起し勝訴判決を得ておく必要があります。
ただし、判決確定を得た債権者が必ず差押えをする、というものではありません。
差押えるには、新たに執行裁判所で手続きをしなければならず、手間や時間、費用が更にかかります。
給料を差押えるにしても、全額ではなく4分の1しか差押えられません。
また、差押え先として債務者の勤め先や銀行口座を指定しなければいけないので、債権者がそれらの情報を知らなければ費用をかけて調査することになり、差押えのハードルは更に高くなります。
訴えられた場合の対応
裁判所から訴状が届いたらどうするか?
対応するか、放置するか、
どのようなリスクがあるか?
これらを検討していきます。
何も対応しない
訴えの内容に間違いなく時効等もないから、争っても敗けるとして何も対応しない、とするのも一つの選択肢ではあります。
対応しなければ、裁判は相手方の勝訴となり、判決の2週間後に確定します。
リスク
確定するとどうなるか?
確定しただけでは、どうなるものでもありませんが、問題は、相手次第では次の段階に進まれるリスクが生じます。
次の段階とは、「差押え」です。
給料や銀行口座が差押えられる可能性が出てきます。
勤務先を知られているような場合は、差押えの可能性が高くなります。
差押えられると、裁判所から給与の差押えの通知が会社へ送付されるので、借金の事実が会社に知られることになります。
そのおそれがある場合は、早急に対応する必要があります。
債権者に返済方法について債権者と相談するか、司法書士や弁護士に債務整理を依頼された方が良いでしょう。
自己破産をする場合
債務整理の方法として自己破産を選択するのであれば、何も対応しないという選択も考えられます。
判決が確定しても、最終的には自己破産により免責(返済不要)となるので判決自体を心配する必要はありません。
自己破産の申立をすれば債権者は差押えができなくなりますが、申立前は差押え可能なので、できるだけ早く自己破産の申立をする必要があります。
また、自己破産は申立てれば必ず成立する、というものではなく確率は低いですが免責不許可となる可能性もあることはご認識下さい。
訴えの取下げをお願いする
裁判所から送られてきた訴状に、第1回口頭弁論期日の日程が指定されています。
指定された日、時間に法廷に出頭するように記載されています。
この第1回口頭弁論期日前であれば、訴えの取り下げの手続は比較的簡易にできます。
そこで、訴えを取り下げてもらうように原告にお願いをしてみることも選択肢にあげられます。
単に「取り下げて欲しい」では、時間も費用もかけて訴えを提起している相手は応じないでしょうから、お願いする際、返済を再開する旨を伝え、具体的な返済方法を提示することが必要です。
ただ、既に費用をかけて訴訟を提起しているので、取下げに応じてもらうことはかなり難しいです。
裁判上の和解を目指す
裁判外でする任意整理を裁判上で行うことになります。
返済方法を原告と協議して決めていきます。
裁判所の判断で、司法委員という方が間に入って調整してくれることもあります。
弁護士や司法書士(140万円以下の場合)に依頼した場合は、原告との協議はすべて対応してくれます。
任意整理の場合と同様に、基本的に将来利息や経過利息(現在までの利息分)のカットをお願いして、元金のみを3~5年にかけて分割で返済する方法での交渉となりますが、任意整理と異なり債権者は既に訴えを提起しているので、こちらの提案に一切応じないというような厳しい交渉となることもあります。
また、任意整理と決定的に異なるのは、和解が成立し合意書を締結したら、その合意書は判決と同様の効果をもたらすということです。
和解後、和解した内容に抵触する行為をする、つまり、滞納すると相手側は差押えをすることができます。
「和解」という言葉で合意内容を安易に考えられる方もおられますが、そうではなく、判決と同様と捉えて下さい。
※債権者によっては、裁判外で返済方法について協議して合意できた場合、訴えを取り下げてくれる場合もあります。
和解に代わる決定
和解は、基本的に原告、被告双方が出廷して行われますが、どちらかが出廷できないようなケースでも、互いに合意した内容で話しをまとめるものとして「和解に代わる決定」という制度があります。
この制度は簡易的な和解に似たもので、簡易裁判所のみに認められている制度です。
現実的にはこの制度を使って解決を図っていきます。
対象になる事件は、
金銭支払の請求、被告が事実を争っていない、被告の資力その他の事情を考慮して相当であると認められる場合になります。
この場合、裁判所は5年を超えない期間での分割払を内容とする決定することができますが、裁判所が一方的決定しても原告、被告どちらかが異議申立(2週間以内)をすれば効力がなくなるので、基本的には両者が合意した内容で決定されることになります。
流れとしては、事前に当事者間で返済方法について協議し合意した上で、原告(又は被告)から裁判所に対して合意した内容で和解に代わる決定を求める上申書を提出します。
決定後に異議が出ないように、事前に上申書に記載される内容(返済方法)を両者で確認しておくことが大切です。