個人再生・自己破産しても減額・免責されない借金
個人再生すると全ての借金が大きく減額され、自己破産では返済の必要がなくなります(免責)。
では、全ての借金がそうなるかというとそうではありません。 以下のように個人再生や自己破産手続きで減額や免責の対象外があり内容はほぼ同じです。
- 租税等の請求権
- 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
- 故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
- 夫婦間の協力及び扶助の義務
- 婚姻から生ずる費用の分担の義務
- 子の監護、扶養義務
- ④~⑥までに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
- 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
- 知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)
- 罰金等の請求権
上記のように税金はもとより、一般的に減額にそぐわないものと考えられます。
具体的には、暴力をふるってケガさせたり、だまして損害与えた等の損害賠償費用は、②の悪意で加えた不法行為に該当します。
費用発生原因から考えて減額の対象にならないのは当然と言えます。
交通事故の損害賠償はケースによって異なります。
交通事故は③の過失で加えた損害に該当しますが、「故意、重過失」要件が付いているので、飲酒運転原因であれば重過失に当てはまり減額されませんが、不注意での事故であれば、不注意の程度によっては「重過失」にならず減額の対象となりえます。
また、「人の生命又は身体を害する」との要件があるので、物損事故の賠償金は減額対象となります。
自己破産自体が裁判所から否定される
自己破産を申立た後、裁判所が審判を行い自己破産による免責許可(借金の返済責任から免れる)を決定しますが、審判において多くはありませんが自己破産を否定される場合があります。
どのような場合に否定されるかというと、不許可事由が法律に列挙されています。
- 債権者を害する財産の隠匿、損壊
- 破産前提での借金
- クレジットカードで購入した商品の現金化
- 特定債権者への優先弁済
- 浪費又は賭博その他の射幸行為による債務
- 債権者名簿の不実記載
- 過去7年の内に自己破産をしている
これに該当すると即、不許可というわけではありません。
自己破産は生活再建への最後の切り札とも言えます。
よほど悪質でなく、真摯に反省してやり直しのための生活計画をしったり立ててその旨を裁判官に上申すれば、不許可事由に該当していても多くは認めてくれます。
ただし、「過去7年以内に自己破産をしている」については、厳しく運用されており認めてもらうのはかなり困難と言えるでしょう。
個人再生で減額されない債権はどうやって返済する?
個人再生手続きで債権が非減免債権に該当し一切減額されない場合、その支払いはどうなるか?
既に返済できない状態だから再生手続きをしているのに、「減額しません。全額すぐ支払って下さい」となっても支払うことはできないでしょう。
非減免債権である以上、最終的には全額支払わなければいけませんが、個人再生手続き過程では支払い方法が考慮されています。
事例として、毎月5万円支払うことになっている養育費用を3ヶ月間滞納(15万円)しているケースを検討します。
申立時点で滞納している養育費用は非減免債権なので減額の対象となりません。
また、個人再生申立後に毎月生じる養育費は再生手続きとは無関係なので、手続中でも毎月5万円を支払わなければいけません。
養育は、親として子供に対する義務なので免除されません。
問題は、申立時点で滞納している15万円の養育費用です。
これも債権なので、滞納している債権として一応、個人再生手続きで作成する債権リストに載せることになりますが、この15万円は非減免債権なので他の債権のように減額されず全額支払義務があります。
では、一括で支払わなければならないかというと、そうではありません。
一括返済を迫れば再生手続自体が破綻しかねないので、個人再生手続き期間中は他の債権と同様に減額して返済を実施します。
再生手続きで返済期間3年、減額率5分の1に決定した場合、滞納していた養育費15万円も他の債権と同じように5分の1に減額し3年にわたって支払うことになります(月額約840円)。
※毎月発生する養育費は支払わなければならないので、個人再生手続き期間中に支払う養育費は840円だけでなく、その月に生じる新たな養育費用5万円を合わせた5万840円です。
そして、他の債権と異なるのは、全額返済義務があるので3年経過後に残りの5分の4を一括で支払わなければいけないという点です。
つまり、再生手続期間中に手続き終了後に一括で支払う5分の4の額を計画的に積立てておかなければいけません。
個人再生をすることで借金は大幅に減額されますが、自己破産のようにゼロにはなりません。
非減免債権があれば、減額されない債権と減額された債権両方の返済をすることになります。
負担も大きくなりますし、無理をして個人再生による返済を選択し、後に返済不能になることも十分考えられます。
そうなると、また債務整理として今度は自己破産手続をやらなくてはいけなくなります。
そうならないように、最初の段階で自己破産することも検討することが大事です。
当事務所に個人再生手続きをご依頼された場合、手続き終了後、減額に基づき返済が開始された後でも、問題が生じた場合は当事務所へご相談下さい。しっかりサポートさせていただきます。