返済義務を負うのは借りた本人であり、家族であっても保証人や連帯債務者になっていない限り返済義務は負わず、返済する必要もありません。
取立禁止行為として貸金業法第21条7項に「債務者等以外の者に対し、債務者等に代わつて債務を弁済することを要求すること。」と規定されています。
これにより、債権者が債務者の親に、夫や妻に、子に、債務者に代わって返済を求めることはできません。
求めた場合、それは違法取立になります。
しかし、場合によっては、お金を借りたのは妻(又は夫)であるが、その夫(又は妻)が返済を求められることが違法取立に該当しない場合があります。
日常の家事に関する借金
民法761条に「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。」という規定があります。
「家事」とは、個々の夫婦がそれぞれの共同生活を営むうえで通常必要な法律行為を指します。
夫婦の職業や社会的な立場等々で共同生活で必要な法律行為も変わってくるので、その範囲を明確にすることは難しく、最終的には法律行為の内容や夫婦の状況、第三者との関係で判断されることになります。
「法律行為」も多岐に渡りますが、ここでは借金返済に焦点を当てますので、法律行為としての購入や取引、借入行為について説明します。
761条の規定によると、「日常の家事」として夫又は妻が行った物品の購入や取引、借金は、夫婦が連帯してその支払い、返済義務を負うことになります。
えっ?と思われる方もおられるかもしれませんが、例えば、水道光熱費、家賃等を夫名義で契約していても、それらは「日常の家事」に該当するので妻が支払いを拒否することはできません。
日常の家事に該当
何が「日常の家事」に該当するかは、夫婦の状況(社会的地位、収入、職業、購入の目的等)によって異なりますが、基本的なものとしては、過去の判例等から以下のようなものが該当すると思われます。
- 水道光熱費
- 生活必需品(食料、衣服、家具、家電等)の購入費(※1)
- 家の修繕費
- 家族の医療費
- 子供の教育費
- 賃料
- レジャー等の娯楽費等々
※1.夫婦の社会的立場や収入等で、生活に「必需」とする品も異なります。高価な品であっても、それが日常の家事に属するもとされる場合もあれば、範囲を超えるものとされる場合もあります。
消費者金融等から借入
金銭の借入は、その使途は分かりにくいので「日常の家事」と認定されにくいと言えます。
しかし、高額ではなく、生活費に充当するために借入している場合は、「日常の家事」として連帯で返済義務を負うおそれがあります。
借入当時の収入状況から家計の収支は恒常的に赤字で、それを補填するために頻繁に比較的少額を借入していた認められると、「日常の家事」に関するものとして夫婦連帯での返済義務が生じます。
クレジットカードをショッピング利用している場合、使用明細が購入したものが分かるので、それが日用品や食料等であれば「日常の家事」に該当する可能性が高くなります。
日常の家事非該当
「日常の家事」として認められない(認められにくい)ものとしては、以下になります。
- 夫婦それぞれの個人的な趣味に関する費用
- ギャンブル
- 仕事上の借金
- 交通事故の賠償金
- 不動産の購入
- 高価の物品(※2)等々
※2.日用品の部類に該当しそうな物品でも、生活状況等からみて「日常」とは言えない高額商品は、非該当とされる可能性が高くなります。