自己破産を選択される方は、銀行や消費者金融から多額の借入に対する返済に追われる、又は滞納状態にあります。
自己破産を裁判所に申立て免責許可(返済責任を免れる)が確定すれば、借入額はゼロになり返済のない状態で生活を再建していきます。
では、誰でも借金の返済に困れば自己破産できるかというと、そうではありません。
自己破産申立後、裁判所は自己破産が必要かどうかを審査します。
自己破産の判断基準
裁判所は、自己破産手続きを審査する上で「申立人に破産手続開始原因がある」かどうかを判断します。
「破産手続開始原因」とは、申立人の経済状態から自己破産が必要と判断される原因であり、「支払不能」「債務超過」の観点から判断されます。
「債務超過」については、法人の破産に関する基準になるので、個人が自己破産するにあたっては、「支払不能」状態にあるかが問題になります。
支払不能
支払不能とは、言葉のとおり収入や財産では返済ができない状態のことを指します。
破産法は「支払不能」について、次のよう定義しています。
「支払不能とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう。」
返済能力がないために、返済期限が到来しているものに対して継続的に返済できないことを「支払不能」状態にあると定義しています。
しかし、収入が〇円、財産が〇円の場合で毎月の返済額が〇円以上の場合が支払不能、というような明確な基準はありません。
毎月の収入が20万円で返済額が25万円であれば明らかに返済不能ですが、返済額が15万円であれば収入の範囲内なので支払不能ではないように見えますが、債務者にも生活があります。
家賃や食費、水道光熱費、電話代等々の生活する上で必要な費用まで返済に回すことはできません。
そこで、支払不能を判定する目安として以下のような状態にあることがあげられます。
- 返済額が、手取り収入から家賃を引いた額の3分の1以上。
- 借入総額を36(3ヶ月)で割った額が、毎月の返済可能額(手取り収入ー生活費)を上回っている。
- 借金の総額が月収の20倍以上。等々
また、債務者が自ら支払いを停止したときは、支払不能にあるものと推定されます。
ただし、上記はあくまでも目安ですので、上記に該当すれば必ず返済不能状態であると裁判所に認めてもらえるわけではありません。
上記に該当しても、返済してもそれなりの金額が残り生活していけると判断されれば、返済可能と判断されることもあります。
支払不能状態にない
裁判所から支払不能状態にないと判断されたら、免責許可が出ません。
この場合、免責不許可の決定がされることになります。
ただし、破産手続開始決定が出る前であれば、申請を取り下げたり、個人再生手続に切り替えることも可能なので、事前にしっかり調査しておくことが重要です。
また、開始決定前に裁判所の支払不能に関する判断について聞いてみて、不能と判断されることが難しそうであれば、申請を取り下げて個人再生や任意整理に移行することを検討することになります。