福岡地裁管轄で自己破産の申立をする場合、裁判所所定の「破産手続開始・免責許可申立てに関する陳述書」を提出することなります。
陳述書
陳述書には、職歴や収入の変遷、家族関係(同居の有無、家族の収入)等を記載するようになっています。
借金に関しては、以下のような項目について記載します。
- 返済のために借金し始めた時期、金額、当時の収入
- 完済できないと思って時期、借金額、当時の収入
- 破産申立を考えた時期、借金額、当時の収入
- 金融業者に貸付を断れたことの有無
- 最後の借入(その用途)、返済時期、額
- パチンコ等のギャンブル行為の有無、時期、使った額 等々
上記のような質問事項に回答していきますが、中でも重要な記載事項として破産に至った経緯や事情について説明する欄があります。
借り始めから年代順に、いつ、どんな事情で、誰から、いくら借り入れ、何にいくら使ったのか。
当時の生活・家族状況、収入の増減を交えて自己破産に至る経緯を説明します。
注意するポイント
書く上で注意するポイント、留意することは、「正直に書く」ということに尽きます。
良く見せようとして、ギャンブルや飲食、ショッピング等に散財してしまったことを隠しても、他の書類や裁判官との面談でバレてしまいます。
債権者に不利益な処分をしたり、浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担した行為は、免責不許可事由とされています。
浪費、賭博行為としては、パチンコや夜の飲食、風俗、過剰なショッピングがあります。
また、商品をクレジットカードで購入してすぐに換金するような行為も、債権者に不利益な処分行為として不許可事由に該当します。
このような事実を書けば、不利になる、不許可になるかも、と思って事実を隠し、全部を生活する上で借金したと記載しても、銀行の入出金履歴や家計表、収入等々の記録から裁判官にはウソがバレてしまいます。
免責不許可事由があっても、多くの場合は裁判官独自の判断で免責とする「裁量免責」により自己破産が成立することは多いので、隠さずに正直に破産に至った経緯を記載することが重要です。
事情の記載の仕方
書き方としては、時系列的に時期と具体的な状況・事情を記載します。
時期は大体でよく、「〇年〇月ころ」で大丈夫です。
流れとしては、まず、借金をはじめ当時の職業、収入、生活・家族状況等を書き、借金をしたきっかけ、理由を詳細に書きます。
自己破産に至る場合、多くは借金返済のために新たに別の金融業者から借入をしたり、クレジットカードを次々に作って、生活費や遊興費、返済にあてたりしているので、その過程も正直に記載します。
事実を記載するだけでなく、当時の状況で何を思ったか、ストレス、精神的にどのような状況にあったか等も書くことで、裁判官により一層借金を重ね自己破産に至ってしまった経緯を理解してもらえます。
内容が不十分
裁判官が記載内容が不十分で自己破産に至った経緯が明確でない、内容に疑わしい点がある、と判断されると、追加で書類や資料の提出を求められことがあります。
期間も長くなり、裁判官に余計な詮索をさせてしまう結果となってしまうので、最初の陳述書の段階で具体的、丁寧に記載することが重要です。
まとめ
自分に都合の悪い事は知られたくない、書きたくない、というお気持ちは分かりますが、数百万円、それ以上の借金を法的にチャラにする自己破産手続は、返済に困っているから申立さえすればできるだろう、という簡単なものではありません。
最初から返済する気がなくて借入を繰り返し散財し、多額になったところで自己破産して借金をチャラにする、このような事が簡単に認められると自己破産の手続自体が崩壊しかねません。
よって、裁判所でしっかりチェックされます。
自己破産に至った経緯に真摯に向き合い反省することで、新たな生活再建に向けてスタートできることになるので、破産に至るまでの状況、事情は正直に裁判所に説明することが大切です。
ご自身で破産申立をすることは難しので、弁護士や司法書士に依頼されることになると思いますが、弁護士や司法書士に正直に経緯を説明して協力して手続きを進めていきましょう。