
自己破産での債務整理は、全ての債権者が対象になります。
任意整理のように債権者を選択することはできません。
申立ての際、裁判所所定の債権者一覧表に全債権者、債権額、使途等を記載して提出します。
まれに、一部の債権者の記載が漏れていたり、友人や親族からの借金を意図的に記載しなかったりするとがあります。
このような場合どうなるか?
債権者一覧表
各裁判所で様式は若干異なるようですが、福岡地方裁判所の債権者一覧表は以下の項目を記載します。
- 債権者の住所、会社名(氏名)、電話番号
- 借入日(最初と最後)
- 最後に返済した日
- 現在の債務額
- 使途(購入、生活費、飲食費、債務返済等)
- 備考(購入した商品名、購入日、金額等)
- 保証人の有無
以上の内容を表にして裁判所に提出します。
しかし、長期間に多くの債権者から借入をしていて滞納しているような場合、どこからいくら借りているか把握してきれないこともあります。
借入時の書類や督促状等の通知を全部保管していれば把握しやすいでしょうが、破棄していれば全てを正確に把握することは難しくなります。
このような場合に、債権者一覧表を作成するにあたって一部の債権者の記載が漏れてしまうことがあります。
また、友人や親族等からの借入は自己破産後にこっそり返済しようと考えて、敢えて債権者一覧表に載せない(債権者の隠蔽)という方もおられるかもしれません。
記載漏れがあった場合
基本的に債権者一覧表に記載されていない債権は免責の対象になりません。
自己破産手続きにおいて免責許可が決定されても、記載されていない債権は免責の対象とはならないので自己破産後も返済義務が残ることになります。
知らずに記載漏れ
しかし、だいぶ昔に借りていたりしていると、記憶も薄れ書類等の記録もなければ意図せずに記載漏れしてしまうことがあります。
免責許可決定前に記載漏れに気づいたら、速やかに裁判所に報告すると共に債権者に通知等の対応をすることで漏れた債権者を含めて手続きを進めることができます。
免責許可決定後に気づいた場合は、どうなるかが問題になります。
既に手続きは終了しているので、債権者一覧表を修正して手続きやり直すということはできません。
この場合、以下の規定が関係します。
破産法253条1項6号には、自己破産で免責されない債権として「破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)」と規定されています。
「知りながら」(意図的に、過失により)名簿に記載しなかった場合は免責されないことになります。
※このような虚偽の債権者名簿を作成し裁判所に提出する行為は、免責不許可事由となり自己破産自体が不成立になるおそれがあります。
「知らずに」(過失なく)記載漏れした債権については、免責の対象となる可能性があります。
※「知りながら」名簿に記載しなかった場合でも、債権者が破産手続きが行われていることを知っていれば免責の対象となります。
債権者一覧表に漏れている債権者は、自己破産手続きについて裁判所から何も通知されず債務者が自己破産したことを知らないので、自己破産後に返済請求するかもしれません。
多くの場合は、自己破産した旨を伝えれば請求を止めてくれますが、債権は免責の対象外として請求を止めてくれなければ、再度自己破産をするか裁判で免責の対象であることを争うかになります。