内緒

自分に借金があることを家族は知らない。
返済に困っている。
何とか自分だけで処理したい。

借金がある方で上記のお悩みをお持ち方は多くおられます。
お金のことは家族であっても言いにくいものです。
ましてや、家族が知らない借金であればその気持ちも強いでしょう。

債務整理後に再び借金に頼らない生活をすることを考えるとご家族の協力は重要だと思いますが、それぞれのご事情でどうしても家族には知られたくないという気持ちも理解できます。

家族にバレずに債務整理手続きができないかと質問されることがありますが、「可能な限りバレないように配慮することはできますが、絶対バレないとは言えません。」とお応えします。

今回は、裁判所にお願いして借金額を大きく減額する「個人再生」手続きを家族にできる限り知られずに行う方法について解説します。

個人再生とは

個人再生手続きとは、裁判所に所定の書類・資料を提出して借金の額を減額してもらう手続きです。
裁判所が決定すると債権者の意向にかかわらず強制的に返済すべき借金が大きく減額されます。

借金額が
100~300万円は一律100万円、
~1500万円は1/5、
~3000万円は一律300万円、
~5000万円は1/10
まで減額されます。
借金が500万円の場合、個人再生が認められれば返済額は100万円になります。

任意整理では達成できない減額幅であり、自己破産が避けたいと希望されている方には最適な債務整理方法です。

申立手続きは簡単ではない

個人再生手続きでは裁判所に以下のような書類・資料を提出しなければいけません。

  • 債権者一覧表
  • 陳述書、報告書
  • 家計表(2ヶ月分)
  • 認可後の予測家計表
  • 財産目録
  • 再生計画案の作成方針
  • 申立書作成に関する説明書
  • 住民票の写し(世帯全員分)等々

書類の作成、資料の収集をご自身で行うのは難しいので、多くは弁護士や司法書士に依頼することになります。

家族にバレる原因

手続きが家族に知られてしまう原因はいくつかあります。

  1. 債権者からの連絡(電話・郵便)
  2. 裁判所からの通知
  3. 現状の財産的制限(ローン返済中の自動車や家族カードが使えなくなる等)
  4. 官報公告(住所・氏名が官報に記載される)
  5. 債権者に親族、友人がいる(手続きしたことが裁判所から通知される)
  6. 書類作成過程

上記のようなことが原因で家族に知られることになります。

債権者からの連絡が原因

滞納した場合、多くはまず携帯電話やメールで督促がされ、返済や連絡がなければ家に電話や督促状が来ます。
家に電話されたりう督促状が家に郵送されると、それで家族に借金の存在が知られることになりますが、滞納しなければ、または、滞納してもすぐに対応すれば家族に知られるおそれは低いでしょう。
これは個人再生手続き前の滞納段階での話しです。

個人再生手続きに着手すると、債権者が債務者に連絡することはできなくなります。
この着手とは、裁判所に申立書類を提出することではなく、司法書士が手続きを債務者から受任したことを債権者に通知した時点になります。
債権額の確認等は司法書士と債権者(消費者金融等)で行うので、債務者(借金した方)が債権者と接触することはありません。

滞納して債権者から直接家に連絡・通知される前に個人再生手続きをすれば、債権者からの連絡・通知により家族に知られることはないでしょう。

裁判所からの通知

裁判所から送られてくる郵便物には、「〇〇地方裁判所」と記載されています。
家にこのような郵便物が送られてきたら、受け取った家族は驚くでしょう。
事情をきかれることになり家族に知られることになります。

そこで、手続きの申立をする際、裁判所からの郵便物の送り先を指定することができます。
司法書士に依頼された場合、送り先を司法書士事務所に指定することで裁判所からの郵便物で家族にバレる心配はなくなります。

現状の財産的制限

司法書士が全債権者に受任通知を発送すると、残念ながら、いわゆるブラックリストに載る(事故登録される)ことになります。
ご自身のクレジットカードは使えなくなりますが家族カードを発行してている場合、そのカードも使えなくなるので使用している家族にバレることになります。

ローン返済中の自動車があると、当該自動車をローン会社から引き上げられることになり家族に知られてしまうおそれがあります。

官報公告

個人再生手続きでは、手続き過程で官報に計3回掲載されることになります。
住所や氏名が掲載されるので、家族や知人が官報を見るようなことがあればすぐに分かります。

しかし、一般の方が官報を見ることはまずありません。
この記事を見ている方も見たことはないのではないでしょうか?

また、全国で同時期に個人再生手続きをしている全員が一気に掲載されるので、目立つこともありません。
よって、官報から家族にバレるおそれはかなり低いです。

債権者に親族、友人がいる

この場合は、残念ながら債権者である親族、友人には確実に知られることになり、その方々から家族にバレることになります。
事前に家族には言わないようにお願いすることもあるのでしょうが、周りの人が知っていて家族だけが知らないという状況はよくありません。
後日バレてしまったら、家族関係がより深刻になりかねません。

事前に家族にお話しすることもご検討下さい。

書類作成過程

家族にバレずに手続きをする場合、この書類作成、資料収集が大きな障害になります。
裁判所には、現在の生活状況、手続き後の返済計画等々の書類、資料を提出しなければいけません。
ご自身に関するものだけであれば何とかなりますが、家族に聞かなければ分からないこと場合はどうするかという問題があります。

家族の協力は必要な書類としては、以下のようなものがあります。
・過去2ヶ月分の家計表
・配偶者に収入がある場合の給与明細
・財産目録等々

家計表は大まかな月の支出ではなく、かなり細かく支出内容を報告しなければいけません。
下記はある地裁の所定の家計表の支出部分の項目です。

ご覧のようにかなり細かい部分の支出の記載が求められていますので、申立人が夫であれば妻に黙って作成するのはかなり難しいことになります。
適当に記載してしまうと、後で裁判官や再生委員に質問されて答えに窮することになり最悪手続きが認められないことになりかねません。

配偶者に収入があれば、その収入額も裁判所に給与明細や所得証明書等で提出しなければいけません。
児童手当等を受給していれば、それらも申告しなければいけません。

これらを家族に知られずに調べて作成することはできないこともない、、とも思いますが、家族の協力なしで作成するのは簡単ではないでしょう。

この家計表や提出書類の収集過程で家族にバレてしまう、又は、作成・収集できずに家族に打ち明けざるを得ない、という状況になるおそれがあります。