委員

借金が多額に膨れ上がり返済に追われ日常生活がままならない状態になってしまうと、生活再建のための債務整理が必要になってきます。
借金が大きく膨れがっていると任意整理手続きでは解決が難しくなり、選択肢は個人再生か自己破産になります。
自己破産をすれば返済から解放され新たな生活に踏み出すことができますが、「自己破産」という言葉の響きから自己破産だけでは避けたいと希望される方もおられます。
その場合は、個人再生を選択することになります。
※個人再生手続きの詳細はこちら

裁判所に個人再生の申立をした場合、裁判所に再生委員を選任される場合があります。
再生委員は必ず選任されるものではありませんが、裁判所が必要と判断した場合は選任されることになります。
今回は、裁判所により再生委員が選任された場合について司法書士が解説します。

再生委員とは

個人再生手続きで裁判所が必要と判断した場合、再生委員が選任されます。
選任された再生委員は、申立人の申立書や状況(借金をした経緯、財産等)を調査したり手続き後の返済計画(再生計画)案等を精査し、必要あれば修正等を指示したりします。

再生委員の多くは弁護士から選任されるので、委員との面談は委員の弁護士事務所で行われる場合が多いです。

再生委員との最初の面談

最初の面談は、裁判所に個人再生手続きの申立書を提出し裁判所が再生委員を選任した後に行われます。
この段階では、まだ手続開始は決定されていません。

選任された再生委員は申立書を精査した上で申立人と面談します。
借金した経緯、現在の収入状況、財産内容等々を調査します。
再生委員が必要と判断すれば、追加で書類、資料の提出を求められることもあります。
この面談後、再生委員は裁判所に意見書を提出し、裁判所は再生委員の意見を踏まえて個人再生手続の開始するかどうかを決定します。

以後の再生委員との面談

再生委員の職務内容は民事再生法223条2項で以下のように規定されています。

2.裁判所は、前項の規定による(個人再生委員の選任)決定をする場合には、個人再生委員の職務として、次に掲げる事項の一又は二以上を指定するものとする。

一 再生債務者の財産及び収入の状況を調査すること。
二 第二百二十七条第一項本文に規定する再生債権の評価に関し裁判所を補助すること。
三 再生債務者が適正な再生計画案を作成するために必要な勧告をすること。

申立人の財産・収入の調査、債権(借金)の評価(残額の確定等)、再生計画(手続終了後の返済計画)について助言、指導、勧告等を行うことが再生委員の仕事になります。

1回目の面談後、再生手続開始が決定されたら、再生委員より申立人は再生手続後に支払っていくであろう返済相当額の積立てを求められることがあります。
これは、手続き後に返済が再開されたとき、実際にやっていけるかを見るためのものです。
この場合、定期的に積立状況等について再生委員と面談することになります。

再生委員との面談で最も重要なのが再生計画の立案です。
再生計画案とは、収入や支出をベースに手続き後に返済しながら生活を再建していくための計画書です。
再生委員の指導、助言を受けながら再生計画案を作成し裁判所に提出します。
裁判所により再生計画案が妥当と認められることによって再生計画が認可決定することで個人再生手続きが終了します。

※司法書士に手続きを依頼した場合、再生委員に提出する再生計画案は司法書士が依頼人と相談しながら作成します。また、再生委員との面談にも同行します。

福岡地裁管轄で個人再生委員が選任されたら

福岡地方裁判所での個人再生手続きで再生委員が選任された場合、以下のように手続きが進められることになります。

  1. 再生委員選任時に予納金として原則5万円及び、官報公告費用等を裁判所、再生委員指定の口座に納める。
  2. 選任後、試験的積立金を再生委員指定の口座へ振込み開始。
    ※再生委員の標準報酬額は約16万円で、予納金の5万円と積立金から支払われることになります。
  3. 現在の状況、積立状況等について再生委員と定期的に面談。
  4. 再生委員に中間報告書、再生計画案、最終報告書を裁判所提出前に点検してもらい、補正指示等を受ける。

福岡地方裁判所の再生委員選任の判断基準

裁判所により再生委員が選任された場合、再生委員は再生に向けていろいろ助言、指導してくれる頼もしい存在になりますが、一方、報酬として約16万円の支払いが必要になります。

個人再生手続きが認められると、借金は劇的に減額されます。
例えば、1,000万円の借金であれば、手続き後には200万と5分の1になります。
これにより毎月の返済も減りますが、それでも借金返済に苦しんでいる状況で16万円の出費は簡単なことではないでしょう。
できれば回避したいと思われるのも当然だと思います。

福岡地方裁判所は、個人再生委員を選任の判断をする際、次の問題点の有無を見て決めています。

  • 負債:
    借金額が非常に高額(住宅ローンは除く)、債権の存否・額の確認に調査が必要等々
  • 資産:
    債務者の財産や権利関係に問題がある、債務者には申告している以外に財産がありそう等々
  • 収入:
    現在の収入が不安定、親族等他者に依存している、高収入で他にもありそう等々
  • 支出:
    借金の原因となった行為をまだ継続していそう等々
  • その他:
    申立に関して更に調査が必要、再生計画案作成等に再生委員のサポートが必要等々

以上のようにある程度の基準は示されていますが、やはり、裁判所がケース毎に選任の要否を判断することになるので、この場合は再生委員は選任されないでしょう、、と言うことはできないでしょう。