裁判所

自己破産手続きの過程で申立人がした行為が「詐欺」と見られることがあります。

自己破産申立て前後で財産を隠したり、裁判所(管財人)にウソを言ったり等の行為をして「詐欺破産罪」に該当すると、刑罰を科せられることになるので、このような行為は絶対に行ってはいけません。

ここでは、どのようなことをすると「詐欺破産罪」になってしまうかについてご説明します。

※返すつもりがなく借金をした場合も詐欺に該当し、債権者から訴えられる可能性があります。

詐欺破産罪

破産法265条に、破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で破産法で規定した行為をした者は、債務者について破産手続開始の決定が確定したときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処すと規定されています。

破産開始申立てを行い破産手続き開始が裁判所で決定されると、裁判所は提出された書類に基づき審査を開始します。

必要に応じて債務者に直接聴き取り(債務者審尋)をすることもあります。

借金が多額であったり、免責不許可事由(賭博等)等があると管財人が選任され、管財人が裁判所に替わって申立人の財産や破産に至った経緯(不許可事由)を調査することになります。

聴き取りや調査で破産法256条に規定されている行為をしていることが判明すると罪に問われることになってしまいます。

265条1項には、詐欺破産罪に該当する行為として以下の4項目を挙げています。

隠匿・損壊行為

債務者の財産を隠匿し、又は損壊する行為は、詐欺破産罪に該当します。

代表的な行為としては、破産申立時に自分の財産を全部開示せずに一部を隠すようなことが該当します。

破産申立前に目一杯お金を借りて、そのお金を隠して返済に充当せずに破産し、借金をチャラにしてから隠していたお金を自由に使う、というようなことは許されません。

財産の譲渡又は債務の負担の仮装

返済に充当されないように金銭や有価証券、不動産等の財産を破産申立前に配偶者や親族、第三者に譲渡したように仮装するような行為は詐欺破産罪に該当します。

また、自分の財産を少しでも残したい気持ちから、親族から借入の事実がないのに多額の借金をしているとウソの事実を申告し(債権者として記載する)、不正に配当金を得ようとする行為も詐欺破産罪に該当します。

財産の現状を改変して、その価格を減損

土地に産廃物を置いたり、更地の土地に第三者に家を建てさせたりして土地の価値を低くするような行為が該当します。

財産を債権者の不利益に処分し、又は債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為

どうせ没収されるのだからと不動産や高級自動車等を知り合いに低価格で売却したり無償で譲渡したりする行為が該当します。

第三者も罪を問われることが

詐欺破産罪は、破産申立者だけでなく第三者(協力者)も罪になる場合があります。

破産法265条の2項に、「債務者について破産手続開始の決定がされ、又は保全管理命令が発せられたことを認識しながら、債権者を害する目的で、破産管財人の承諾その他の正当な理由がなく、その債務者の財産を取得し、又は第三者に取得させた者も同項と同様とする。」と規定されています。

破産手続開始の決定や保全管理命令の発令の認識が要件となっていますので、開始前ではなく開始決定(又は命令発令)後に債権者を害する目的で行った行為が対象になります。

破産管財人の承諾等の正当な理由により行った行為は対象になりません。

まとめ

破産申立人は自己の財産(99万円までの財産の保持は可能)を返済に充当し、返済しきれない部分が返済免除として免責されます。

債権者は、債務者の自己破産で多額の債権を失い大きな損害を受けることになります。

よって、自己破産に至る過程で自己の財産を隠蔽したり仮装譲渡したりして返済を免れようとする行為は詐欺行為として厳しく処罰されます。

司法書士が依頼を受けて自己破産申立書を作成する際、自己破産に至る経緯を本人から詳しく聴き取りします。

借入額、当時の収入、預金口座の記録、生活状況、支出内容等々、いろいろなことをお聴きします。

いろいろな事情で借金をされていますが、中にはギャンブルやキャバクラ、ホストクラブ等にはまって多額の借金をつくったことを隠そうとする方もおられます。

生活費に使ったと言い訳しても、お金の流れを調べると生活費以外に多額のお金が使われていたことは分かりますし、何に使ったのかを必ず追及されることになります。

また、破産申立後は管財人や裁判官による審査を受けますので、ここでウソがばれてしまうと自己破産の成立自体が困難になってしまいます。

隠し事なく、誠実に、全てを正直に申告することが重要です。