給与振込口座が凍結
債務整理で銀行の預金口座が凍結される場合があります。
預金口座がある銀行からの借入を債務整理する場合、弁護士や司法書士が債務整理の受任通知をしたら当該銀行の口座は凍結されます。
以降、引き出し、引き落としはできなくなります。
凍結口座が給与振込口座であれば、引き出すことができなくなるので、受任通知をする前に他の銀行口座に振込先を変更するように会社に依頼しておきます。
しかし、会社が従業員の給与振込先として当該銀行に一括していると、特定の従業員だけを別の銀行口座に変更することはできないとして、口座変更ができない場合があります。
また、振込先の変更を会社に依頼する際、いろいろ理由を聞かれることで債務整理がバレるのではないかと心配され、口座変更を嫌がる方もおられます。
その場合の対処方法についてご説明します。
口座はそのままで
変更しないで給与振込口座が凍結されると、以下のようなことが懸念されます。
- 給与の振込ができずに会社にバレる。
- 振り込まれた給料が借金の返済に充てられてしまう。
- 給与が引き出せなくて生活できない。
給与振込はできる
口座が凍結されても、通常、給与の振込は可能です。
会社側は支障なく従来通り振込手続きができるので、債務整理が会社にバレるということはないでしょう。
返済に充てられない
債務整理の受任通知をした時点で、借金の分割返済の権利はなくなり(期限の利益の喪失)、債権者である銀行は残金の一括返済を請求できるようになります。
よって、その時点で口座に預金があれば、金額によっては返済に充当されることになります。※1
では、凍結後に振込まれた給与はどうなるか、同様に返済に充当されるかというと、殆んどはそうなりません。
返済不能状態にある場合に特定の債権者が自己の債権を回収(振込まれた給与と自己の債権を相殺する)すると、のちのち否認権(管財人によって回収行為が否認される)の対象になるおそれがあること、また、給与は生活資金そのものなので、相殺すると生活ができない、等の理由で通常、銀行は自己の債権の返済充当することはしません。※2
給与は引き出せる
前半で、口座が凍結されたら引き出すことはできない、と説明しました。
キャッシュカードで引き出すことはできませんし、本人が窓口に通帳と印鑑をもっていっても引き出すことはできません。
「引き出せない」とは、上記のように今まで通りには引き出せないという意味で、特別な手続きをすれば引き出すことは可能です。※2、※3
銀行によって手続きは多少異なりますが、銀行は勝手に債務者が引き出すことがないように債務整理手続き受任者(弁護士、司法書士)が引き出しに関与していることを確認します。
事前に銀行に受任者が引き出す旨の連絡をいれた上で、本人(債務者)が通帳、銀行印を持っていって引き出します。
そのとき、金融機関宛に上申書の提出を求められる場合もあります(司法書士が作成します)。
このように、引き出しに少々手間がかかりますが、凍結後でも引き出しは可能です。
凍結解除
銀行カードでの借入の場合、通常、保証会社がついています。
債務整理の受任通知を送ると、残債務は保証会社が債務者に代わって弁済(代位弁済)し、以後、保証会社が債権者となります。
これにより、銀行の債権は全額弁済され債権者ではなくなるので、口座の凍結は解除されます。
口座の凍結解除は保証会社による代位弁済がいつ行われるかによりますが、これは会社によってまちまちです。
2,3週間程度で行われる場合もあれば、3か月程度を要することもあります。
解除後は、凍結前と同様に自由にATMでも引き出すことができるようになりますが、それまでは毎回先に述べた手続きが必要になります。
※1.受任通知をする前に、口座から全額引き出しておきます。普通預金だけでなく定期預金も解約して引き出します。
※2.方針変更もあり得るので、事前に銀行に確認します。
※3.引き出せるのは給与だけです。