個人事業主の自己破産

会社や個人に破産手続きがあるように、個人事業主の方も自己破産することができます。

個人ですが事業を行っているので、「個人」ではなく、「個人事業主」として自己破産手続きを行うことになります。

手続自体は「個人」が行う手続きと大きく異なることはありませんが、事業に関する説明や書類等の提出が必要になります。

ここでは、「個人事業主」が自己破産をするケースについてご説明します。

個人事業主の自己破産

個人事業主も個人と同様に破産申立をすることができます。

個人の方が自己破産申立をし手続の開始が決定される場合、現状の資産や内容によって裁判所は「同時廃止」か「管財事件」に振り分けます。

しかし、個人事業主の場合、事業がかかわっているので債権債務も個人の場合より複雑で、管財人による調査(取引履歴、資産調査等々)が必要と判断されるので、基本的に「管財事件」になります

そのため、管財人費用として20万円(内容によっては増額されます)の予納金が必要になります。

※予納金は一括払いが基本ですが、分割払いが認められる場合もあります。

福岡地裁の「個人事業主」の取り扱い

福岡地方裁判所管轄では、過去3年以内に自営をした経験がある場合は、個人事業主として確定申告書等の資料の提出が求められます。

よって、既に廃業していたとしても、廃業から3年以内に自己破産を申し立てる場合は、個人事業主と扱われることになります。

同時廃止になることも

個人事業主であっても、例外的に「同時廃止」手続きになる場合もあります。

事業を廃止して長期期間経ていたり、資産が殆どないことが明白で(20万円未満)、過去の取引額も大きくなく、取引関係・履歴も単純で分かりやすい状態であれば、同時廃止になる可能性があります。

当事務所においても、個人事業主の方が同時廃止になった事例がございます。

手続

申立に必要な書類は個人の自己破産と基本的に同じですが、個人事業主の場合、追加として以下の書類が必要になります。

  1. 元帳(又は金銭出納帳)
  2. 過去3期分の確定申告書
  3. 決算書又は貸借対照表・損益計算書
  4. 事業等に関する補充説明書

事業等に関する補充説明書には、どのような事業をどうのようなやり方で運営していたか、設備や在庫品、売掛・買掛等々の内容を記載することになります。

※提出後に、裁判所から内容について聞かれることがあります。
過去には、「売上に対して接待費が多いが理由は?」「事業を始めるに際して原資はどうやって調達したか?」等々がございました。

1人で活動している個人事業主

人を雇ったり、仕入れや設備・機械等を揃えて事業を行っているような場合は、上記に従って書類を揃えていくことになります。

しかし、現在は働く環境も変わり、個人が特定の会社(又は個人)と業務委託契約をして報酬を得ているケースも多くなっています。※1

自分しかいないので、厳格に元帳等の帳簿を作成していない、保存していない方もおられますが、正直に書類が提出できない理由を説明することで認められる場合があります。

※1.主従関係があり、実質的には雇用関係にあるにもかかわらず、雇用契約をせずに業務委託契約をすると、使用者は「偽装請負」として違法になる可能性があります。

自己破産後に事業継続できるか

業務委託契約のように1人で活動していて、設備等も必要ないのであれば、以前と同様に個人事業主として活動は可能ですが、設備等を揃えて活動していた場合は、難しくなります。

自己破産に際して、設備は没収・換金されるとお考えください(換金価値がない物は除外)。

手続中に事業を継続して勝手に設備を使うと、価値の毀損行為とみなされるおそれがあります。

また、設備のリース契約や販売先・仕入先との契約、雇用契約等も終了(解除)することになるので、継続することは難しと言えます。

 まとめ

個人事業主でも、個人と同様に自己破産ができます。

ただし、事業が絡んでいるので事業に関する書類の作成、収集が必要になり、個人の自己破産よりも準備期間が必要になります。

殆どは管財事件扱いになり、費用も同時廃止より高額になってしまうので※2、もうムリと思ったら、資金が完全に枯渇する前に早めに専門家に相談しましょう。

※2.法テラスを利用する場合も、予納金は自分で準備しなければいけません。