保証人の責任
ある人が金融機関からお金を借りる場合に連帯保証人(以下、保証人と記します)を求めることがあります。
※「連帯保証人」と「保証人」の責任範囲は異なります。
連帯保証人は、連帯保証人が何人いようが各自は債務全額の返済義務を負いますが、保証人は債務額を保証人の数で割った額の返済義務を負います。
保証人は、金融機関と直接保証契約を締結することになります。
この契約には債務者(借りた方)は関与しません。
債務者が返済できなくなったら借主に代わって全額返済(連帯保証債務)する義務を負うことになります。
この観点から、債務者と保証人は「一蓮托生」と言われます。
「保証人」とありますが、債務者が返済できなくなれば自分が借りたお金と何らかわりなく返済しなければいけなくなる、それが保証人の責任になります。
返済義務の範囲
保証債務の範囲として民法447条に以下のように規定されています。
- 保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。
- 保証人は、その保証債務についてのみ、違約金又は損害賠償の額を約定することができる。
2にあるように、保証人が債権者との間で保証債務について違約金や損害賠償の支払いの取り決めをすることも可能で、そのような約定をすればその支払い義務も負うことになります。
返済方法
通常、債務者が一定期間滞納した場合、債権者は債務者の対して分割返済ではなく一括返済を請求できるようになっています(期限の利益の喪失)。
分割返済できない債務者は当然一括返済はできないので、連帯保証人は一括返済請求されることになります。
対応できる資産があればよいのですが、なければ返済不能となってしまい、債務整理は必要になってしまいます。
基本的に一括返済請求となりますが、金融機関によっては連帯保証人による分割返済に応じる場合もありますので、相談してみるのも一つの方法です。
債務者との関係
先に述べたように保証契約は保証人と債権者(金融機関)との間だけの契約であり債務者は契約に関係ありませんが、債務者が全額返済すれば当然に保証人の金融機関に対する保証債務も消滅します。
求償権
保証人が債務者に代わって債務を弁済した場合、保証人は弁済した額を債務者に対して請求することができます(求償権)。
当然の権利ではありますが、返済できなくなった相手から返済を求めることは厳しいでしょう。
当事者間で協議して月々での分割返済にしたり、その返済に対して保証人をもとめたり等して肩代わりに弁済した額を払ってもらうように努めましょう。
協議した内容は、きちんと書面にしておくことが重要です。
時効について
民法改正により債権(借金)は、一律「5年」で時効により消滅することになります。
債権者・債務者・保証人の関連
民法457条に以下のような規定があります。
- 主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、保証人に対しても、その効力を生ずる。
- 保証人は、主たる債務者が主張することができる抗弁をもって債権者に対抗することができる。
- 主たる債務者が債権者に対して相殺権、取消権又は解除権を有するときは、これらの権利の行使によって主たる債務者がその債務を免れるべき限度において、保証人は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
保証人への効力
債権者が債務者に対して、裁判上の請求や支払督促等の法的手段を行い権利が確定すると、時効は更新され時効期間は10年に延長されます。
この場合、連帯保証人の保証債務も同様に10年に延長されることになります。
保証人による支払い
債務者が債権者に対して主張できる場合、保証人も同様の内容の主張を債権者に対してすることができます。
債権が時効により消滅していることを債務者が債権者に主張できる場合、保証人も時効による消滅を主張して返済を拒否できます(債務者が主張していなくても可)。
また、債務者が債権者に対して何らかの債権をもっていて債務と相殺できる場合、保証人はそのことを主張することも可能です。