自己破産手続きには、同時廃止と管財事件の2つの種類があります。
申立後に裁判所が上記2つのどちらで手続きを進めるかを決めます(振り分け)。
同時廃止による手続きの方が期間も短く費用も抑えられるので、申立人としては同時廃止を希望することろですが希望通りにはいきません。
自己破産は借金をチャラにするので申立人にある程度の財産があれば、それを返済に充てることになり、その手続きをする管財人が選任され管財事件となります。
財産的に管財事件基準に該当する場合は、管財事件に振り分けられます。
※管財事件に振り分けられる基準はこちら「管財事件の福岡地裁基準」を参照ください。
しかし、管財事件への振り分けは財産面だけでなく、借金をした経緯が判断基準になる場合もあります。
※管財事件に振り分けられやすいパターンの詳細はこちら
自己破産には、免責不許可事由(自己破産を認めない事由)がいくつか法律で規定されています。
その事由の一つに「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。」があります。
キャバクラ等の飲食や風俗等で過度に浪費した、パチンコや競馬等のギャンブルで浪費した、過度のショッピングで浪費した、等々で返済不能になり自己破産する場合が当該事由に該当します。
ただし、免責不許可事由に該当するから自己破産が認められないかというと、そうではありません。
該当したとしても、裁判官の判断(裁量免責)で自己破産が認められることがあります。
そして、裁判官の裁量免責を得られるか、同時廃止に振り分けられるか、で重要になるのが陳述書になります。
自己破産陳述書
自己破産申立書には、いろいろな事項を記載しなければいけません。
過去の職歴とその時の収入、返済のための借金をするようになった時期、完済できないと思い始めた時期、過去1年以内に10万円以上で処分した動産の有無等々が質問事項にあり、それに回答しなければいけません。
また、破産に至った経緯や事情についても記載しなければいけません。
裁判所の記載説明書には「借り始めから年代順に、いつ、どんな事情で、誰から、いくら借入れ、何にいくら使ったか」を詳しく記載するように指示されています。
借金した経緯の説明
自己破産をしなければならなくなった経緯を裁判所に説明するために記載するのですが、免責不許可事由に該当する行為をしていた場合、この経緯の説明が同時廃止か管財事件の振り分けに重要になります。
先に説明したように、財産的に管財事件に該当しない場合でも、浪費等の免責不許可事由がある場合、管財事件になる可能性があります。
これは、裁判官が管財人を選任して免責不許可事由の内容を調査させて、それに基づいて裁量免責をするかどうかを判断するためです。
経緯を詳細に記載する
裁判官は陳述書に記載された経緯の説明が不十分であれば、質問されたり追加で資料を求めたりしますが(補正)、説明不十分でさらに調査が必要として管財事件に振り分けられることになります。
何年も遡って当時の状況を思い起こして記載することは難しいですが、ここを簡単に書いてしまうと管財事件になる可能性が高くなります。
こうならないようにするためには、陳述書の記載で裁判官が裁量免責できるように詳細に説明することが重要になります。
詳細に記載すれば管財事件にはならないとは全く言えませんが、可能性を少しでも低くするためにも詳細な説明が必要です。
しかし、管財事件に振り分けられる可能性があり、現在の手持ち資金から管財費用(22万円前後)を工面できそうにない場合は、債権者からの訴訟リスクはありますが自己破産申立を遅らせてその間に資金を貯める、という選択肢の検討も必要になるでしょう。