借金離婚

夫が知らない間にギャンブルにはまって多額の借金を抱えていた。
結婚後、夫に多額の借金があるのが分かった。

いろいろな理由で借金を抱えることはあります。
夫婦の借金を2人で協力して返済していくご夫婦もいます。

しかし、夫がギャンブルや遊興費に繰り返し散財し借金を重ねていたり、結婚前から多額の借金があるのを隠されていたりすると、離婚を考える妻もおられるでしょうでしょう。

では、離婚したら夫の借金はどうなるか?
半分は妻にも返済義務があるのか?

気になるところですが、ここでは離婚後の借金の取り扱いについてご説明します。

結婚前の夫の借金

夫が結婚前から抱えていた借金は、夫が自身のために作った借金なので妻に返済義務はありません。

夫の借金の返済を妻に請求する債権者もいるようですが、妻であっても夫の結婚前の借金の返済義務はありません。

婚姻中はもちろん、離婚後も返済する必要はないので仮に返済を求められても「関係ありません!」とキッパリ拒否して下さい。

婚姻中に夫が作った借金

基本的に婚姻中であっても夫が自分の名前で借りた借金は、夫個人の借金になります。
この借金については、婚姻中であろうと離婚後であろうと妻、元妻に返済義務はありません。

婚姻中に作った借金が夫婦の生活費に使われていた

夫が自分の名で借金をしていたが、その使途が夫婦の日常生活費であった場合は少し事情が変わってきます。

借りたお金が家賃や電気代やガス代等の光熱費、生活用品、医療費、子供の教育費などに使われていたような場合、借金を夫と共同で使ったことになりますので妻にも返済義務が発生します。

民法761条には、「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。

ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。」と規定されています。

条文には「連帯」となっていますので、借金の「半分」ではなく、「全額」返済する義務を負うことになりますが、日常生活費に該当するかどうかは夫婦の関係、それぞれの収入、職業等で変わってきます。

買い物や子供の送り迎いに必要と購入した車は、761条の日常の火事に関しての法律行為(売買契約して購入)と言えるでしょうが、夫が自身の趣味として山等での走行を楽しむためだけに購入した4WD車は対象とはならないでしょう。

このように借金して日常生活で必要なものを購入した時は妻にも返済義務がありますが、では、離婚したらどうなるか? ですが、残念ながら債務から逃れることはできません。

連帯して債務を負っており、離婚しても連帯の責任は消滅しません。

ただ、離婚した場合、債務者が夫である借金の返済を離婚後の元妻に返済請求するようなことはあまりない、、ようです。

離婚時の財産分与に影響が

夫婦が離婚する際、夫婦共有財産は原則として2分の1ずつ分け合うことになります。

対象となる夫婦共有財産とは、結婚中の夫婦の協力によって形成された財産ですので特有財産(婚姻前からの財産や親族から贈与又は相続したものなど)は含まれません。

この財産にはプラスの財産はもちろんマイナス財産である借金も含まれます。

そして、夫婦の共同生活をするために生じた借金であれば、夫婦共同の債務として財産分与の対象になることになります。

離婚後の夫の借金の注意点

説明したように夫がギャンブルや遊興費で多額の借金を作っていても、基本的に離婚した妻には返済義務はありません。

しかし、注意すべき点が2つあります。

  1. 妻が保証人になっている。
  2. 子どもがいる。

妻が夫の借金の保証人になっていたら返済義務から逃れることはできません。

夫が返済を滞納すれば、妻、元妻は保証人として一括での返済を求められます。

この場合は、自力で、親族に援助してもらって返済するか、債務整理するか、という事になります。

また、子供がいる場合、夫が滞納することでその子に請求がいくということはありませんが、夫が借金を残したまま亡くなったときに問題になります。

子は夫の相続人になるので、夫のプラスの財産とともに借金も相続することになります。

プラスの財産の方が多ければ、財産を換金して借金を返済し余った額を相続すれば良いですが、借金の方が多ければ子が自分のお金で返済しなければいけなくなります。

この場合、自分が相続人になったことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄(または限定承認)をすることで借金を相続しなくて済みます。

よって、借金が理由で離婚して子を引き取って生活している元妻は、元夫が亡くなったことを知ったとき、元夫の借金⇒あるか、ないか⇒あれば子が相続してまう⇒相続放棄、、、という事を念頭に行動して下さい。